松本市の日ノ出町通りを巡る歴史と現在の水源地探訪
片倉モール(イオンモール)は、松本市の日ノ出町通りに面した地域に数年前に建設され(晴庭)、現在では市の主要なショッピングモールとして多くの市民や訪問者に親しまれています。モールに隣接するエリア(風庭、空庭)には書店や映画館、食堂が並び、市民の憩いの場ともなっています。
この場所は歴史的にも特別な背景を持ちます。明治から大正時代にかけて、ここには片倉工業の製糸工場が存在し、日本の製糸工業の発展を支えました。また、蚕種の改良を行う普及団という研究機関も設置され、生糸工業の重要な拠点として知られていました。
製糸工業の成功には清浄な水が欠かせません。そこで松本市の名水の一つとして注目されるのが源智の井戸です。松本市中央3丁目に位置するこの井戸は、特別史跡に指定され、江戸時代以前から地域の重要な水源として利用されてきました。その名は、小笠原貞慶の家臣、河辺縫殿助源智(かわべぬいのすけげんち)に由来しています。井戸と言ってもこの地域の井戸はつるべ取られて貰い水の印象とは違います。水脈が薄川(すすきがわ)と女鳥羽川(めとばがわ)の複合扇状地の伏流水であって、地層にパイプを入れると砂礫層の地層から地面近くまで、特に夏には地上まで自噴してくるのです。
源智の井戸は歴代の領主によって守られ、1880年(明治13年)には明治天皇の巡幸時に御膳水として用いられるなど、大変貴重な存在です。また、環境保全活動も地元の有志によって行われており、清掃や注連縄の貼り替えが継続的に実施されています。2008年には環境省の「平成の名水百選」に選ばれ、松本市の湧水群を代表する名所となっています。
さらに、この地域には松本市の上水道の一部を今も支える「源池水源地」もあります。この施設は松本市立美術館の近くに位置しています。そもそも現在の松本市美術館は、松本警察署の跡地、そしてこの旧松本警察署は移転して県(あがた)に移った松本市立源池小学校の跡地でした。毎分約150リットルの湧水を誇るこの水源は「水めぐりの井戸整備事業」により整備され、多くの市民や観光客に利用されています。
本日はイオンモールへの訪問後、源池水源地の写真を撮影しました。その画像を見ると、美しい湧水の姿に歴史の息吹を感じられます。
コメント