黒目の上に帯状の濁り?――「帯状角膜症」とはどんな病気か
ある日、鏡を見て「黒目の表面が白く濁っている」「目がなんだかゴロゴロする」と気づいたら、それは「帯状角膜症(たいじょうかくまくしょう)」かもしれません。この病気は医学的には「band keratopathy(バンド・ケラトパシー)」と呼ばれ、角膜の表面にカルシウムが沈着して、帯状の白い濁りができる病態です。
今回は、この病気について、症状・原因・なぜ帯状の形になるのか・治療法などをわかりやすくご紹介します。
症状:初期は無症状、進行すると視力にも影響
帯状角膜症は、角膜(黒目)の前面にカルシウムが沈着して白く濁る病気です。初期にはほとんど自覚症状がなく、健診や人からの指摘で気づくこともあります。
しかし、沈着が進むと次のような症状が現れます:
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目のゴロゴロ感(異物感)
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光がまぶしく感じる(羞明)
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視力の低下(濁りが瞳孔にかかると)
特に濁りが瞳孔の部分にかかると、視界がにごる・見えづらくなるといった症状が出ます。
原因:カルシウム沈着の背景に、慢性の目の病気や代謝異常
帯状角膜症の原因には、大きく2つのタイプがあります。
❶ 局所的な原因(目の病気によるもの)
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慢性のぶどう膜炎
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緑内障や眼内手術後の眼球萎縮
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長期の角膜炎
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点眼薬(リン酸塩含有)や結膜の石灰沈着
これらは角膜表面の状態が悪化してカルシウムが沈着しやすくなる「土壌」をつくります。
❷ 全身性の原因(体の病気によるもの)
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慢性腎不全(透析中)
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副甲状腺機能亢進症
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血中カルシウム・リン濃度の異常
全身的にカルシウムやリンが多い状態になると、角膜にも沈着しやすくなるのです。
なぜ「帯状」になるのか?
カルシウムは角膜のBowman膜(ボーマン膜)という層に沈着します。しかも、角膜の中心部(水平帯の範囲)では涙の蒸発やpHの変化が起きやすく、これがカルシウムの析出を促す要因になります。
そのため、濁りは目の中心やや下寄りの水平帯状に現れやすいのです。これが「band=帯状」という名前の由来です。
治療法:重症度に応じた対応が必要です
治療の方針は、症状の程度と視力への影響により異なります。
● 症状が軽く視力に影響のない場合
→ 原因となる全身疾患や眼疾患の管理・経過観察を行います。
● 視力障害や異物感が強い場合
→ EDTA(エチレンジアミン四酢酸)という薬剤によるカルシウム除去を行います。具体的には:
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点眼麻酔のあと
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EDTAを含んだ綿球を角膜の白濁部に当てて
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カルシウムを溶かすように処置します
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必要に応じて角膜表面を滑らかに整えます
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(私清澤はこのEDTAを入手できませんし、それによる沈着石灰除去の療法を大学でも実際には見た事がありません。)
通常は外来で短時間で可能な処置ですが、広範囲に及ぶ場合や再発を繰り返すと手術的な治療(角膜表層切除)が検討されます。
おわりに:早期発見と原因治療が大切
帯状角膜症は、角膜が白く濁ることで目立つ病気ですが、その背後に慢性的な炎症や全身の代謝異常が潜んでいることも多いため、単に表面の濁りを除去するだけでなく、原因の評価が非常に重要です。
目の違和感や白い濁りに気づいたら、放置せず、眼科でしっかり検査を受けましょう。
(本記事は患者さんへの情報提供を目的としたものです)以下に以前の更に詳しい記事をリンクしておきます。
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