【GLP-1薬と目の病気】糖尿病治療薬が加齢性黄斑変性のリスクをわずかながら上げる?
◎ 設定:糖尿病治療薬が目に与える影響とは?
最近、体重減少や血糖管理のために使われる「GLP-1受容体作動薬(オゼンピックやマンジャロなど以下GLP-1薬)」に注目が集まっています。この薬は、2型糖尿病の治療だけでなく、肥満の治療薬としても広く使用されており、日本でも処方されるケースが増えています。
そんな中、JAMA Ophthalmology誌(2025年7月2日公開)に掲載された新しい研究によると、このGLP-1薬を使っている人は、「滲出型加齢黄斑変性(nAMD)」という視力に大きく影響する病気の発症リスクがやや高いことが示唆されました。
◎ 要旨:GLP-1薬と加齢黄斑変性の関係
この研究は、カナダの66歳以上の糖尿病患者を対象とした約3年間の追跡調査です。調査では次のような結果が得られました:
- GLP-1薬を6か月以上使用したグループ(約46,300人)では、93人が滲出型加齢黄斑変性を発症
- GLP-1薬を使用していなかったグループ(約92,700人)では、88人が同じ病気を発症
- 結果として、GLP-1薬を使っている人では、発症リスクが約2倍になる傾向がありました
ただし、両グループとも発症率そのものは低く(0.2%未満)、リスクが絶対的に高いとは言えません。また、治療期間が長くなるほどリスクが上がる傾向も見られました。
nAMDは、網膜の中心にある黄斑という部分に新生血管(異常な血管)ができて、出血やむくみを起こし、中心視力が大きく低下する病気です。症状が進行すると、視力の回復は難しくなります。
研究者の中には、GLP-1薬の急激な血糖コントロールが目の血管に影響を与えているのではないかと考える人もいますが、正確な原因はまだ分かっていません。
◎ 結論と院長コメント:バランスの取れた判断が大切
この研究は、GLP-1薬が加齢黄斑変性のリスクをわずかに高める可能性があることを示していますが、あくまでも「統計的傾向」であり、すべての人が発症するわけではありません。
付随する専門家のコメントでも、「GLP-1薬の健康上の利益は、リスクを上回っているように見える」と述べられています。つまり、無理に中止する必要はないが、目に不安のある人は一度眼科で相談をということです。
眼科医の立場からのアドバイスとしては:
- 糖尿病がある方やGLP-1薬を使用している方は、定期的に眼底検査を受けること
- 物が歪んで見える、中心が見にくいなどの症状が出たら、すぐに受診すること
- 他の病気とのバランスを考え、主治医と眼科医の両方に相談することが大切です
高齢化が進む中で、加齢黄斑変性は珍しい病気ではなくなっています。最新の知見を知ることは、目を守る第一歩です。
📚 参考文献
Underdahl S. “GLP-1 Drugs Linked to Higher AMD Risk.” JAMA Ophthalmol. Published online July 2, 2025. DOI: 10.1001/jama.2025.10318
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