眼科臨床実践講座2025は8月2日から3日にかけてベルサール東京日本橋で行われました。今後ネット配信も行われるようですが、わたくしは2日の後半部分と3日の全項目を聴講しました。話の全貌紹介ではなく、耳に残ったキーワードを記載解説したいと思います。
白内障手術のアップデート:永田真由美(獨協医科大学)
私はすでに白内障手術からは撤退していますが、大学にいたころによく出会ったこれらの場面を思い出しました。IMS, IFISなど新しい言葉が使われるようになっていた印象でした。現在も手術を行っている諸先生かたにはこれらの対応策の知識は常識ながら、役立つ情報だったと思われました。
1.逆瞳孔ブロック(LIDRS:Lens-Iris Diaphragm Retropulsion Syndrome)
解説:
白内障手術中、目の中で水の流れが強すぎると、虹彩(茶目)が後ろに押されてしまい、急に前房が深くなる現象が起きます。これを逆瞳孔ブロックと呼びます。
対応:
術前にLIDRSを予測し、手術中の注水圧を調整したり、灌流液の流れを和らげる工夫(後嚢挙上や低灌流など)を行うことで安全性を保ちます。
2.IMS(Infusion Misdirection Syndrome) :上図
解説:
手術中に注入する水が、水晶体の後ろ(硝子体)側へ迷い込み、眼圧が異常に上がったり、前房が浅くなることがあります。
対応:
IMSが疑われたらすぐに硝子体を切除する手術(後房穿刺、前方硝子体切除など)を追加することで圧力を正常に戻し、手術の安全を保ちます。
3.IFIS(Intraoperative Floppy Iris Syndrome)
解説:
前立腺肥大症の薬(タムスロシンなど)を使っている方では、手術中に虹彩がふにゃふにゃして動きやすくなり、瞳孔が狭くなったり、虹彩が吸い込まれてしまうことがあります。
対応:
術前に服薬歴を確認し、虹彩固定リングの使用や特殊な粘弾性物質で虹彩を安定させ、安全に手術を進めます。
4.チン小帯脆弱例(チン氏帯脆弱)
解説:
水晶体を支えるチン小帯が弱っていると、手術中にレンズがぐらついたり落ちやすくなります。特に強度近視や外傷歴のある方に多く見られます。
対応:
チン小帯の状態を慎重に確認し、カプセルテンションリング(CTR)を使って支持を補強したり、眼内レンズの固定法を変更することで、手術の安定を図ります。
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