「過酸化水素消毒液に十分中和されていないコンタクトレンズを誤って装用 → 強い刺激で角膜びらん・毛様充血を生じた」という典型的な化学性角膜障害のシナリオです。既に患者さんが大量洗眼を済ませている前提で、眼科医として次に行うべき対応と予後を整理します。
① 初期対応
- 診察での確認
- 角膜上皮障害の範囲(フルオレセイン染色)、角膜混濁の有無、前房反応の有無を確認。
- 眼圧測定は不要な場合もありますが、広範囲角膜障害なら二次的な眼圧上昇にも注意します。
- 薬物治療
- 抗菌点眼薬:二次感染予防のため、フルオロキノロン点眼などを処方。
- 角膜保護:ヒアルロン酸や人工涙液の頻回点眼。
- 消炎鎮痛:眼痛が強ければ非ステロイド点眼(NSAIDs)またはサイクロプレジック点眼(ミドリンPなど)で毛様体痛軽減。
- ステロイド点眼は基本的に角膜上皮欠損が残る間は避けます。混濁や前房反応が強ければ短期間・慎重に検討。
- 眼帯
- ソフトコンタクトレンズ状のバンデージコンタクトレンズを装用すると疼痛緩和と治癒促進になる場合があります。
② 生活指導
- レンズの使用中止:完全治癒までコンタクト使用は禁止。
- 点眼の遵守:抗菌薬・人工涙液の頻回使用を指導。
- 受診間隔:翌日再診、その後は上皮修復の経過を見ながら数日ごとにフォロー。
③ 今後の予後
- 軽症例(点状角膜上皮剥離〜小びらん)
- 1〜3日程度で上皮修復。瘢痕を残さず回復する可能性が高い。
- 中等症(角膜中央部の広範囲びらん)
- 数日〜1週間で上皮閉鎖。まれに混濁を残すことがある。視力に影響すれば追加治療を検討。
- 重症(角膜実質まで障害)
- 稀ではあるが角膜潰瘍化や瘢痕混濁により視力低下が持続する可能性あり。
④ 患者指導で強調すべき点
- 中和ディスクを正しく使用すること
- 過酸化水素は「中和が不十分なまま装用すると必ず強い化学損傷を起こす」ことを説明。
- 予防が最良の治療
- 消毒後すぐにレンズを入れない、途中でレンズを取り出して目に入れないことを徹底。
- 不安があればすぐ受診
- 強い痛み・視力低下・充血が続けば再来院を促す。
✅まとめると、十分に洗眼済みであれば「抗菌点眼・角膜保護点眼・疼痛緩和」を中心に経過観察。軽症なら数日で自然治癒が期待できますが、角膜混濁が残るリスクがあるため短期的な再診を必ず指導します。
コメント