公費医療の仕組みをわかりやすく――眼科外来でよくある疑問にお答えします
(東京保険医新聞「公費医療の仕組みを学ぶ」を参考に)
医療費には、健康保険でまかなわれる一般の「保険診療」のほかに、国や自治体が費用の一部または全部を負担する「公費医療(公費負担医療)」という制度があります。高齢者、小児、難病、障害など、それぞれの状況に応じて多くの制度が並立しており、診療報酬の請求事務にも専門的な知識が必要となります。眼科外来でも、公費医療の取り扱いはしばしば複雑で、患者様だけでなく医療機関側でも理解に時間を要することがあります。今回は東京保険医新聞の記事掲載を機に、公費医療の概要を分かりやすく整理してご紹介します。
●公費医療とは何か
公費医療は、通常の保険診療に加えて、対象となる患者様の医療費を国や自治体が補助する仕組みです。たとえば「乳幼児医療費助成」「ひとり親家庭医療費助成」「重度心身障害者医療費助成」「難病医療費助成制度」など、多岐にわたる制度があります。
共通する点は、「保険診療の自己負担分」または「保険適用外の特定部分」を補助する」 という考え方に基づいていることです。
ただし制度ごとに対象年齢、所得制限、助成内容、自己負担額の有無などが異なり、同じ患者様でもケースごとに負担割合が変わることがあります。
●眼科外来で公費医療が複雑になりやすい理由
眼科は幅広い年齢層の方が受診され、さらに長期フォローが必要な疾患も多いため、次のような場面で公費医療が関係します。
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小児の視力検査・弱視治療では、乳幼児医療証による助成が使われる
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高齢者の白内障・緑内障治療では自治体の高齢者医療助成が関係する
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難病医療費助成(網膜色素変性症、ベーチェット病など)が適用される場合がある
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身体障害者手帳をお持ちの方では、自立支援医療が利用できる場合がある
このように、年齢・所得・疾患名・障害認定の有無・保険種別 などが複雑に絡むため、受付での確認作業が必須になります。
●公費医療の「併用ルール」
一般的に、公費医療は 健康保険に上乗せして使う もので、単独では成立しません。
そのため、
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必ず健康保険証と公費医療受給者証の両方を提示していただく
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公費医療の優先順位が決まっており、複数の受給資格がある場合は順番に適用する
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助成される範囲は制度ごとに異なる(初診料のみ対象、薬剤は対象外など)
といった決まりがあります。
また、自治体の制度では「月初の有効期限切れ」がよくあり、更新手続きが済むまで公費が使えないことがあります。眼科でも月初に「受給者証の期限が切れています」などのご案内が生じることは珍しくありません。
●患者様にご協力いただきたい点
公費医療を円滑に適用するため、次のご協力をお願いしています。
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保険証と受給者証は毎回ご持参ください
制度の更新時期は患者様ごとに異なり、医療機関側から把握できません。 -
住所変更・保険変更・資格喪失があれば必ずお知らせください
自治体の助成は住所地に紐づいているため、引越し直後は公費が一時的に使えなくなることがあります。 -
診療内容によっては助成の対象外になることがあります
例えば、公費でカバーしない眼鏡処方や自由診療などは自己負担となります。
制度の変更が比較的頻繁に行われるため、患者様ご自身が概要を知っていただくことは、負担や誤解を減らすうえでとても有用です。
●まとめ
公費医療は、患者様の医療費負担を軽減し、必要な治療を円滑に受けられるようにするための大切な制度です。しかし制度が細かく分かれているため、眼科の外来事務でも取り扱いは相当に複雑です。当院でも毎日、職員が確認作業を行いながら適切な運用に努めております。患者様にも、保険証・受給者証の持参や住所変更のご連絡など、日々の診療にご協力いただければ大変助かります。
公費医療を正しく理解し、患者様が安心して治療を受けられる環境を引き続き整えてまいります。



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