■ 所見のまとめ
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瞼板内に透明~白色調の球状の貯留嚢胞
→ マイボーム腺の出口が詰まり、腺内に分泌物や液体がたまった状態(=マイボーム腺嚢胞、meibomian retention cyst)ができている。 -
その表面に黄色い点状の膿(pustule)
→ 表層のマイボーム腺の炎症が急性化し、脂腺の内容物が細菌反応や無菌性炎症で膿状となったものが2次的にできている。 -
周囲の皮膚は軽度発赤(赤み)を示し、炎症性変化がある。
つまり
“瞼板内の貯留嚢胞に、急性の霰粒腫様炎症(膿点形成)が合併した状態”
と考えるのが最も整合的です。
■ 病態の解説(医師と患者向け両用で)
1. マイボーム腺のつまり(マイボーム腺梗塞)
マイボーム腺は油分(脂質)を分泌して涙の蒸発を防いでいますが、
出口が詰まると中に分泌物が溜まり、
白く透けて見える嚢腫(=貯留嚢胞)を形成します。
2. 表層の急性炎症・膿点形成
詰まった腺の周囲に炎症が及ぶと
急性霰粒腫(hordeolum internum に近い状態)
のように膿がたまることがあります。
ただし、今回の写真では炎症の中心が皮膚側に破れず逆に内側に留まっているため、
外観は霰粒腫(chalazion)に近いが、裏側の急性成分(pustule)が混在しています。
■ 鑑別診断
患者さん向けには下記のように説明できます:
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霰粒腫(chalazion カラジオン)
→ 皮膚側にしこり、慢性炎症。 -
急性霰粒腫(麦粒腫)
→ 痛み・赤み・膿が主体。 -
マイボーム腺嚢胞(retention cyst 貯留嚢胞)
→ 水が溜まったように透明で丸いものができている。
今回はこれらが 併存した混合型 の所見と考えられます。
■ 治療方針
① 保存的治療
軽症~中等症の場合:
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温罨法(40℃前後、5〜10分)を1日2〜3回
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マイボーム腺の開通を促す
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抗生物質点眼・軟膏(炎症が強い場合)
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ステロイド点眼(腫れが目立つときのみ、短期間)
② 穿刺(膿点開放)+内容物排出
膿点の部分を局所麻酔下で小切開して内容物を除去することで速やかに改善。
特に今回のように
瞼板内嚢胞の上に膿点が乗っている複合タイプでは
腫瘤の“芯”を出す処置が有効。
③ 霰粒腫切開術(必要時)
慢性化し、硬いしこりとして残る場合は
瞼板側からの切開で嚢胞壁ごと除去する。
■ 予後
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急性成分(膿)は数日以内に軽快
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透明嚢胞は週~数週かけて縮小する
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再発はマイボーム腺機能不全(MGD)があると起こりやすいので
眼科での継続管理(温罨法・清拭・マイボーム腺圧出)が重要です。
■ 患者さん向けに一文でまとめると
「まぶたの脂を出す腺が詰まって袋状にたまり、その上に炎症が加わって膿ができた状態です。温める治療や点眼で治ることが多いですが、場合によっては小切開で膿を出すと治りが早くなります。」



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