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[No.4381] 集中治療後症候群(Post-Intensive Care Syndrome:PICS:PICS)とは何か ― ICUを生き延びたあとに起こりうる“見えにくい後遺症” ―

集中治療後症候群(Post-Intensive Care Syndrome:PICS:PICS)とは何か

― ICUを生き延びたあとに起こりうる“見えにくい後遺症” ―

近年、集中治療(ICU)の医療技術は大きく進歩し、重い病気や大けがでも命が助かる方が増えてきました。しかしその一方で、「命は助かったが、退院後の生活が以前と大きく変わってしまった」という患者さんやご家族の声も少なくありません。こうした問題をまとめて説明する概念が**集中治療後症候群(PICS)**です。

PICSとは、重篤な病気や外傷でICUに入院した後に、新たに出現した、あるいは悪化した身体的・認知的・精神的な障害が、退院後も長く続く状態を指します。これは正式な病名というより、「ICU後の後遺症を見逃さず、社会全体で支えるための考え方」として提唱されました。

どのくらい多いのか

研究によると、ICUを退院してから1年以内に、約半数以上(約54%)の患者さんが、何らかのPICS関連症状を経験するとされています。これらの症状は数か月で改善する場合もありますが、中には5年以上続いたり、後遺症として固定してしまうケースもあります。

どんな症状が出るのか

PICSの症状は人によって大きく異なります。

  • 身体面:筋力低下、疲れやすさ、息切れ、慢性的な痛み、嚥下障害、体重減少

  • 認知面:物忘れ、集中力低下、判断力の低下、言葉が出にくい

  • 精神面:不安、うつ、不眠、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、時に自殺念慮

これらが重なることで、仕事や運転、家事、社会復帰が難しくなることもあります。

リスクを高める要因

ICU入院が4日以上になること、高齢、重症度が高いこと、女性、ICU滞在中の**せん妄(意識の混乱)**などが、PICSの発症リスクを高めることが分かっています。特に、せん妄は後の認知障害と強く関連します。

早期発見と評価の重要性

専門家の合意では、PICSのリスクが高い患者さんには、退院後2〜4週間以内に評価を行うことが勧められています。記憶力テスト、不安や抑うつの質問票、歩行能力の評価などを、主にかかりつけ医が担うことが想定されています。

治療と支援

薬で「治す」というより、支える医療が中心です。

ICUでの出来事を振り返る「ICU日記」は不安や抑うつを軽減し、運動療法や心理的支援も有効とされています。患者同士のピアサポートも、孤立感を減らす可能性があります。

予防の取り組み

ICU滞在中から、痛み管理、過度な鎮静を避ける、せん妄予防、早期リハビリ、家族の関与を重視する「ABCDEFバンドル」と呼ばれる包括的ケアを行うことで、死亡率やせん妄の発生が減ることが示されています。

ICUフォローアップ外来

米国では、ICU退院後の患者を多職種で支えるICUフォローアップ外来が徐々に広がっています。症状の整理、薬の調整、リハビリや心理支援の調整などを行い、かかりつけ医と連携して回復を支えます。

まとめ

PICSは、ICUを生き延びた患者さんの半数以上に影響しうる重要な問題です。退院は「治療の終わり」ではなく、「回復のスタート」。早期の気づきと継続的な支援が、生活の質を大きく左右します。


出典

Butcher BW. Post–Intensive Care Syndrome. JAMA.

オンライン公開日:2026年1月15日

DOI: 10.1001/JAMA.2025.23666


清澤のコメント

集中治療は命を救いますが、その後の人生をどう支えるかが次の課題です。PICSは「気合や根性の問題」ではなく、医学的に説明できる後遺症です。患者さんとご家族が「異変に気づき、早めに相談する」ことが、回復への第一歩だと感じています。

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