ポリコナゾルなど抗真菌薬と視覚障害
―「薬の副作用としての見えにくさ」をどう考えるか―
ポリコナゾルは、真菌(カビ)感染症の治療に使われるアゾール系抗真菌薬です。皮膚科や内科領域で広く用いられ、重篤な副作用は比較的少ない薬剤ですが、まれに「見えにくさ」などの視覚症状が報告されています。ここでは、抗真菌薬使用中に起こりうる視覚障害について、眼科の立場から整理します。
起こりうる視覚症状
報告されている症状には、かすみ目、ピントが合いにくい、ぼやけて見える、まぶしさ、二重に見える感じなどがあります。多くは軽度で一過性であり、薬の中止や減量により自然に改善することがほとんどです。
なぜ抗真菌薬で目の症状が出るのか
アゾール系抗真菌薬は真菌の細胞膜合成を阻害しますが、その作用は完全に真菌だけに限定されているわけではありません。
主な機序としては、①中枢神経系への軽度の影響により、視覚情報処理が一時的に乱れること、②自律神経バランスの変化によるピント調節や瞳孔反応の不安定化、③倦怠感や軽度脱水など全身状態の変化を介したドライアイ悪化などが考えられています。
重い眼疾患につながるのか
重要な点として、ポリコナゾルが網膜や視神経を直接障害するという明確な証拠はありません。失明や不可逆的な視神経障害に直結する薬剤ではないと考えられています。ただし、緑内障、視神経疾患、強度近視などをもともと有する方では、見え方の変化を強く自覚することがあります。
受診を勧めるサイン
急な視力低下、片眼だけの見えにくさ、数日以上続く症状、目の痛みや頭痛を伴う場合は、眼科または処方医への相談が必要です。自己判断で薬を中止せず、必ず医師と相談してください。
追記:アスペルギルス症治療薬と視覚障害
アスペルギルス症治療薬の中で、視覚症状が比較的よく知られているのがボリコナゾルです。霧視、色覚変化、まぶしさ、視界のちらつきなどが報告されていますが、多くは投与初期に出現し可逆的です。機序は中枢神経系への一過性の影響と考えられ、網膜や視神経を直接障害するものではありません。
イサブコナゾルでも頻度は低いものの、同様の視覚違和感が報告されています。一方、アムホテリシンBやエキノキャンディン系(ミカファンギンなど)では視覚障害はまれで、起こる場合も全身状態や電解質異常に伴う間接的影響と考えられます。
眼科医からのひとこと(清澤のコメント)
抗真菌薬による視覚症状の多くは一過性ですが、「薬の副作用かもしれない」と気づくこと自体が大切です。見え方の変化は体からのサインです。不安があれば、遠慮なくご相談ください。



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