クインケ浮腫(血管性浮腫)とは
――突然まぶたや唇が腫れたら?――
ある日突然、まぶたや唇がぷくっと腫れる。しかもかゆみはあまり強くなく、じんわりとした腫れぼったさが目立つ。じんましんとは少し様子が違う――そのような場合に考えられるのが**クインケ浮腫(血管性浮腫)**です。
■ 概要
クインケ浮腫とは、皮膚の深い部分(真皮深層〜皮下組織)に急にむくみが起こる病態です。
19世紀に報告したドイツの医師クインケの名に由来します。
通常のじんましんは皮膚の浅い部分に起こりますが、クインケ浮腫はより深部に水分がたまるため、境界がはっきりしない腫れとして現れます。特にまぶた、唇、頬、舌など、やわらかい組織に起こりやすいのが特徴です。
眼科では、朝起きたら片目だけまぶたが腫れているという訴えで受診されることが少なくありません。
■ 原因
原因は大きく分けて次のように考えられます。
① アレルギー反応
食べ物(甲殻類、ナッツなど)、薬剤(抗生物質、解熱鎮痛薬)、化粧品など
② 薬剤性
ACE阻害薬(高血圧治療薬)によるものは比較的有名です
③ 遺伝性血管性浮腫
C1インヒビター異常によるまれな疾患
④ 特発性(原因不明)
実際の臨床ではこれが最も多い印象です
アレルギーが関与する場合はヒスタミンが主役ですが、遺伝性やACE阻害薬関連ではブラジキニンという物質が関与します。この違いは治療選択にも影響します。
■ 症状
・突然の局所的な腫れ
・かゆみは軽いことが多い
・痛みは通常強くない
・数時間~2日程度で自然軽快することが多い
まぶたに起こると、視界が狭くなったり、片側だけ顔貌が変わったように見えたりして大変驚かれます。
重要なのは、喉や舌に腫れが及ぶ場合です。呼吸困難を伴うことがあり、これは緊急対応が必要です。
■ 対応と治療(内服例を含む)
多くは自然軽快しますが、症状が強い場合や再発例では治療を行います。
① 抗ヒスタミン薬(第一選択)
例:
・フェキソフェナジン(アレグラ)
・ロラタジン(クラリチン)
・エピナスチン(アレジオン)
眠気の少ない第二世代抗ヒスタミン薬を使用することが一般的です。
② ステロイド内服(短期間)
腫れが強い場合
例:プレドニゾロンを数日間
③ 重症例
アナフィラキシーを伴う場合はアドレナリン投与が必要になります。
ACE阻害薬が原因と疑われる場合は、その薬剤の中止が重要です。
■ 受診の目安
次の場合は速やかに医療機関を受診してください。
・喉の違和感や息苦しさがある
・繰り返し起こる
・原因不明で急に強く腫れた
・痛みや発赤が強く感染が疑われる
まぶたの腫れは、クインケ浮腫のほかにも
麦粒腫、蜂窩織炎、アレルギー性結膜炎などとの鑑別が必要です。
■ まとめ
クインケ浮腫は「見た目のインパクト」は強いものの、多くは一過性で自然軽快します。ただし、気道に関わる場合は緊急疾患となり得ます。
突然まぶたが腫れたときは慌てず、
・かゆみはあるか
・痛みはあるか
・呼吸は大丈夫か
を確認し、必要に応じて受診してください。
眼のまわりの腫れは、見た目だけでなく心理的な不安も大きいものです。適切な鑑別と対処により、多くは安全に経過します



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