Q:鼻の周りに酒さの既往がある中年男性です。現在、片眼だけに眼瞼結膜の充血が続いています。陳旧性のマイボーム腺梗塞と考え、温罨法と眼瞼清潔を連日行っていますが、細菌培養は陰性で、充血がなかなか改善しません。次に考えるべき病気と対応は何でしょうか。
A:このような症例でまず強く疑うべきなのは「酒さに伴う眼病変」、いわゆる眼型酒さ(ocular rosacea)です。顔面、とくに鼻周囲の持続的な紅斑や毛細血管拡張を特徴とする酒さは、皮膚疾患であると同時に、眼瞼や結膜にも慢性炎症を起こすことが知られています。皮膚症状が軽快していても、眼の炎症だけが遷延することは珍しくありません。
眼型酒さでは、マイボーム腺の脂質分泌異常が慢性的に存在します。単なる梗塞の後遺症ではなく、腺機能そのものが不安定になっているため、温罨法だけでは改善しない場合があります。むしろ炎症が強い時期に過度の温罨法を行うと、血管拡張が助長され、充血が長引くこともあります。まずは温罨法を1日1回5分程度に制限し、刺激を減らすことが大切です。
次の対応として重要なのは、炎症のコントロールです。弱いステロイド点眼を短期間使用し、炎症がどの程度抑えられるかを確認します。慢性例ではシクロスポリン点眼などの免疫調整薬が有効なこともあります。また、内服ドキシサイクリン少量療法は、抗菌作用というよりも抗炎症作用を期待して用いられ、酒さ関連のマイボーム腺機能不全に有効とされています。
片眼性である点も特徴的です。酒さは通常両側性が多いものの、炎症の強さに左右差が出ることはあります。ただし、片眼性が長期に続く場合は、他疾患の除外も必要です。上方結膜の強い充血があれば上輪部角結膜炎を、限局した肥厚があれば結膜腫瘍やリンパ増殖性病変を疑います。治療抵抗性の場合には、細隙灯での丁寧な観察が不可欠です。
まとめると、この症例では単なる陳旧性マイボーム腺梗塞ではなく、酒さに伴う慢性眼瞼炎・マイボーム腺機能不全が背景にある可能性が高いと考えられます。対応としては、①温罨法の見直し、②防腐剤フリー人工涙液の使用、③短期ステロイドで炎症評価、④必要に応じてドキシサイクリン内服や免疫調整点眼の検討、という段階的治療が現実的です。
酒さは「皮膚の病気」と思われがちですが、実は眼にも深く関係します。顔の赤みの既往がある方で片眼の充血が長引く場合は、眼型酒さという視点を持つことが診断と治療の鍵になります。
追記:眼面の酒さは、顔の赤ら顔として知られる酒さがまぶたや結膜、時に角膜にまで及んだ状態を指します。原因は一つではなく、皮膚や眼瞼の慢性炎症、毛細血管の拡張しやすさ、マイボーム腺機能不全、毛包虫(Demodex)の関与などが重なって起こると考えられています。紫外線、飲酒、香辛料、寒暖差などの刺激で悪化しやすいのも特徴です。症状は、顔面の持続する赤みや毛細血管拡張に加え、眼の充血、乾燥感、異物感、灼熱感、まぶたの腫れなどがみられ、霰粒腫や麦粒腫を繰り返すこともあります。重症例では角膜炎や角膜潰瘍を生じ視力に影響する場合もあります。対応としては、まず紫外線対策や刺激物の回避など生活面の管理が基本となり、眼科的には眼瞼清拭や温罨法によるマイボーム腺ケア、人工涙液の使用を行います。炎症が強い場合は抗菌薬点眼や低用量ドキシサイクリン内服を併用することもあります。皮膚症状が目立つ場合は皮膚科との連携が重要です。慢性的に再発を繰り返す疾患であり、単なるドライアイと見過ごさず、長期的視点で管理することが大切です。



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