思春期に初めて眼鏡を考えるケース
― 片眼は以前から低視力、良い方の目も低下して受診した高校生 ―
高校生になって初めて眼科を受診するケースの中に、「片眼は以前から見えにくかったが、もう一方の目が0.9程度見えていたため、特に困らず眼鏡を作らなかった」という方がおられます。ところが数年後、その“良い方の目”も0.6程度まで低下し、さすがに不自由を感じて来院される、という経過です。
今回の例では、現在の屈折値が右-1.0D、左-3.0D程度とのこと。屈折差が2.0Dあります。これは日常診療では決して珍しくない「不同視(anisometropia)」の状態です。
■ まず確認すべきこと
第一に重要なのは、
・矯正視力はどこまで出るのか
・弱視の既往はないか
・眼位・両眼視機能に問題はないか
・眼軸長はどの程度か
高校生であれば視覚系の可塑性はすでにほぼ完成しています。したがって、片眼が十分に矯正視力1.0以上出るかどうかの確認は必須です。もし0.8〜0.9程度しか出ない場合は、幼少期からの屈折未矯正による機能弱視が残存している可能性もあります。
■ 両眼0.9程度での眼鏡処方は妥当か
結論から言えば、両眼で0.9前後の矯正視力が安定して得られ、本人が違和感なく装用できるなら妥当です。
ただし注意点があります。
不同視が2.0Dある場合、完全矯正(-1.0/-3.0)をいきなり装用すると、像の大きさの差(不同像視)による違和感が出ることがあります。特にこれまで未矯正で生活していた場合、脳が「片眼優位」に適応している可能性があります。
そのため実臨床では、
・完全矯正に近い処方
・あるいはわずかにマイルドに調整
のいずれかを、装用テストをしながら決定します。
高校生であれば、授業・黒板・スマートフォン・部活動など視覚負荷が高い生活です。常用眼鏡で両眼視を確立させることは、現在の眼科診療として標準的かつ合理的な選択といえます。
■ レーシック以外の選択肢
LASIK は18歳以上で屈折が安定していれば理論上可能ですが、高校生の段階では通常適応外です。
コンタクトレンズ以外の現実的選択肢としては:
-
通常の眼鏡(第一選択)
最も安全で可逆的。 -
近視進行抑制治療の検討
進行中であれば、低濃度アトロピンやオルソケラトロジーを検討します。ただし左右差が大きい場合は慎重な評価が必要です。 -
両眼視機能の評価と必要なら訓練
不同視が長期間放置されていた場合、融像幅が狭いことがあります。 -
部分矯正からの段階的導入
いきなり完全矯正が困難な場合に選択します。
■ なぜ今、きちんと矯正すべきか
高校生は受験期に入ります。
裸眼0.6では、黒板やスクリーンの視認性が不安定です。
さらに重要なのは、
長期間の片眼依存は両眼視機能の発達を阻害する可能性があることです。
成人後に眼疾患で片眼を失った場合、これまであまり使っていなかった眼の視機能に依存せざるを得なくなります。若い時期に両眼をきちんと使う経験は、将来の視覚予備能の確保にもつながります。
■ 私ならどうするか
私の診療であれば、
・まず完全矯正でどこまで出るか確認
・両眼視バランスを評価
・違和感がなければ常用眼鏡を処方
・半年〜1年ごとに屈折と眼軸長をフォロー
という方針をとります。
■ まとめ
両眼0.9程度の矯正視力を目標に眼鏡処方することは、現在の標準的な眼科診療として妥当です。むしろ、これまで未矯正であったことを踏まえると、今こそ両眼視を整える良い機会とも言えます。
大切なのは、「度数」ではなく「視機能全体」を見ることです。
単なる近視矯正の問題ではなく、両眼でしっかり見る力を育て直す段階にある、そう理解するのが適切でしょう。
自由が丘清澤眼科院長としては、若い患者さんには「今きちんと整えることが将来を守る」とお伝えしています。



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