ぶどう膜炎における失明パターンを理解し回避しよう!教育セミナー10
オーガナイザー 髙瀬 博(宮田眼科東京) 松宮 亘(神戸大)
清澤のコメント:ぶどう膜炎の領域は非専門分野でも話がまだ理解可能です。ましてこのセッションは教育講演なので聞き易かったです。現在は自治医大教授になられた蕪城先生と今回の講演者で東大講師になられた田中理恵先生と共に、遺伝子検索の目的で眼瞼痙攣患者の血液を(南砂町)清澤眼科と井上眼科とで集めたのを懐かしく思い出しました。
E10-1
演者:鈴木 佳代(北海道大学)
演題:前部ぶどう膜炎に伴う眼合併症の治療戦略と視機能維持
要旨:
前部ぶどう膜炎の中でも、若年性慢性虹彩毛様体炎は遷延する炎症と多彩な合併症(白内障、緑内障、黄斑浮腫、角膜混濁など)を伴い、重症例では失明リスクが高い。毛様体炎膜形成による房水産生の障害や瞳孔ブロックの進行は視機能を脅かす。早期の消炎、合併症への的確な対応、手術後の炎症再燃への管理が重要である。近年は抗TNF-α阻害薬やチューブインプラント導入で治療成績が向上しつつあり、治療戦略の再構築が進む。
E10-2
演者:眞下 永(JCHO大阪病院)
演題:ぶどう膜炎性緑内障: 段階的アプローチと低侵襲治療による失明回避戦略
要旨:
ぶどう膜炎に続発する緑内障(UG)は視神経障害を引き起こしうる重大な合併症で、段階別(A~C)に応じた管理が必要。初期(A期)では鑑別診断と炎症・眼圧の迅速なコントロールが、C期では低侵襲手術(S-LOT)による長期的眼圧維持が鍵となる。特に原疾患が明確でも眼圧が高止まりする症例には、濾過手術より侵襲の低い選択肢が有効。UGにおける失明回避には、早期診断と段階に応じた戦略的治療が必須である。
E10-3
演者:臼井 嘉彦(東京医科大学)
演題:失明を来しうる後部ぶどう膜炎(感染性)
要旨:
後部の感染性ぶどう膜炎は網膜や視神経を不可逆的に障害し、失明に至ることがある。主な原因はHSV、VZV、CMV、細菌性眼内炎、トキソプラズマ、トキソカラ、結核、梅毒など。稀少疾患であるため初診眼科での見逃しが多く、早期対応の重要性が高い。非専門医による初期対応が視力予後に大きく影響するため、典型例と非典型例の症例提示を通じ、診断のポイント、治療、他科連携の必要性について具体的に示す。
E10-4
演者:田中 理恵(東京大学)
演題:後眼部炎症のある非感染性ぶどう膜炎の失明原因とその予防
要旨:
非感染性後部・汎ぶどう膜炎はサルコイドーシス、原田病、ベーチェット病などを含み、視機能障害の主要原因となる。黄斑病変、緑内障、網膜剥離、脈絡膜新生血管など多様な失明要因が存在し、炎症の再発や治療遅延がこれらを助長する。近年は生物学的製剤や免疫抑制薬の導入により管理は向上しているが、早期診断とタイミングを逃さない治療介入が重要。本講演では代表的症例を通して実践的な診療のポイントを紹介する。
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