角膜疾患

[No.2932] フックス角膜内皮ジストロフィの 診断と治療( 奥村直毅先生)を読みました

フックス角膜内皮ジストロフィの 診断と治療(世界との比較)という解説記事が 奥村直毅先生(同志社大学生命医科学部)により日本の眼科[今月の一話]に記載されています。私もこのブログで何回か説明した疾患で、欧米よりは少ないのですが市民の4%程度には見られ、米国では40%、最近では日本の角膜移植の10%を占めているそうです。ドライアイや視界の曇りを主訴とするようです。紹介先としては遺伝子検査ができるかどうかはともかくとして角膜移植を多数行っている病院という事になるでしょう。この記事の要約を再度採録します。

フックス角膜内皮ジストロフィは、角膜に影響を与える進行性の疾患で、両眼に発症し、主に40歳以降に診断されます。この病気は、角膜の内皮細胞が徐々に失われ、角膜が透明でなくなることで視力に影響を与えます。最初の段階では、角膜に「グッタータ」と呼ばれる小さな突起ができ(図は角膜内皮を写したスペキュラー顕微鏡写真です)、これが増えることで視界がぼやけたり、光が眩しく感じられることがあります。病気が進行すると、角膜に水分がたまり、角膜が腫れてさらに視力が低下します。

診断と症状

フックス角膜内皮ジストロフィは、眼科医による細隙灯顕微鏡を使った検査で診断されます。この検査では、角膜に現れるグッタータの有無や、角膜の状態を詳しく観察します。進行すると、グッタータが角膜中央に集中し、さらに進行することで視界の質が著しく低下します。

この病気の症状には、視界がかすむ、特に朝起きた時に視力が低下する、光に敏感になる(グレア)、コントラスト感度の低下などがあります。症状が進行すると、角膜の腫れが原因で、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。

有病率と遺伝的背景

フックス角膜内皮ジストロフィは、欧米に比べると日本では少ない病気ですが、それでも40歳以上の日本人の約4%がこの病気にかかっていると言われています。この病気は家族性であることが知られており、遺伝子の異常が原因となることが多いですが、家族歴がない場合でも発症することがあります。

欧米の研究では、特にTCF4という遺伝子の変異が病気に関与していることが発見されており、多くの白人患者がこの遺伝子の異常を持っています。しかし、日本人やアジア人ではこの遺伝子の異常は少なく、他の遺伝的要因が関与している可能性があります。

治療法

フックス角膜内皮ジストロフィの主な治療法は角膜移植です。病気が進行し、視力が大きく低下した場合、角膜内皮を移植する手術が行われます。特に「DSEAK」や「DMEK」といった手術方法が一般的で、これらは角膜内皮のみを移植するため、患者の負担が少ないのが特徴です。日本でも、フックス角膜内皮ジストロフィが角膜移植の理由の約10%を占めていますが、欧米では40%に達しており、より早い段階での治療が行われていることが分かります。

また、最近では「DSO(デスメ膜剥離術)」という新しい手術方法も試みられています。これは、角膜の一部を取り除く手術で、ROCK阻害剤という点眼薬を併用することで、角膜内皮の再生を促す研究が進められています。

さらに、将来的には薬物治療の可能性も期待されています。特に欧米では、酸化ストレスが病気の進行に関与しているとされ、このストレスを抑える薬の開発が進んでいます。

まとめ

フックス角膜内皮ジストロフィは、日本では比較的稀な病気とされていますが、欧米では角膜移植の主な原因の一つとして認識されています。診断には眼科の専門的な検査が必要で、治療法としては角膜移植が主流です。今後、さらなる治療法や薬物療法の開発が進められることが期待されています。もし症状が気になる場合は、早めに眼科を受診し、専門的な診断と治療を受けることが重要です。

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