角膜疾患

[No.1997] Fuchsフックス角膜内皮ジストロフィーの有病率:新論文紹介

フックス角膜ジストロフィーをご存じだろうか?私が自分でこれを初診で診断したことはないが、米国軍人の眼科病歴を閲覧するとドライアイを訴えている患者さんの診断名にこれが時々出てきて、その症例なら細隙灯で斜めに光を当てて内皮を見るときらきらとその乱れが認識できる。米国に比べて日本ではそんなに多くはない疾患なのかと思っていた。白内障手術を行う施設であればスペキュラー顕微鏡で撮って見れば(下段中央のように)角膜裏面に丸い焦点の合わない領域が黒く見えるから、診断は一目瞭然であろう。

今月の日本眼科学会誌(127巻9号)に京都グラウコーマコホート研究におけるFuchs角膜内皮ジストロフィーの有病率という富岡靖史氏の論文が出ていた。2005年から2020年のサンプルで、スペキュラー顕微鏡で内皮を撮影した1250例を分析している。1250例中11眼が内皮細胞以異状(0.9%)、32眼が滴状角膜(2.5%)、12眼をconfluent(合流した?★)な滴状角膜(1.0%)と判定した。その結論は、京都緑内障コホート研究におけるFuchs角膜内皮ジストロフィーの有病率は3.5%であったとされている。

この巻の巻頭言を臼井智彦氏(国際医療福祉大)が記載されていて、私の興味を引いた。この疾患の遺伝子研究が世界的に進んでいるが、臼井氏も「角膜内皮のみ、それも中央部から障害される」ことをこの疾患の「謎」としていた。またこの疾患患者の多くは家族歴を持たない点も謎で、環境因子や生活習慣の影響も強い、単純な常染色体顕性遺伝ではなく不完全浸透のはずと解説している。しかし、世界では角膜移植の原疾患の40%を占めており、実は一般的な疾患ではないのかとしている。

★cofluent:英語では以下のような意味を持つことがある:この場合は敵状角膜プラスの病変という意味か?

  • 二つ以上の物体や形状が一緒になり、それぞれの経路で出会う
  • 川や道路などが合流する
  • 病気が融合する
  • 培養細胞が融合して一つの塊を形成する
  • 昨年の当ブログの記事

    フックス角膜内皮ジストロフィーとは:

 

メルマガ登録
 

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。