帯状角膜炎とは?目の表面にできる「帯状の傷」と痛みについて
皆さんは「帯状角膜炎(たいじょうかくまくえん)」という言葉を聞いたことがありますか?
これは、目の表面(角膜)に傷ができて炎症を起こす状態のひとつで、「目がしみる」「ゴロゴロする」「まぶしい」「見えづらい」といった症状が現れます。特に「しみるような痛み」が強く感じられることが多く、日常生活にも影響を及ぼすことがあります。
今回はこの帯状角膜炎について、どんな病気か、どうして痛みが出るのか、そしてどのように治療していくのかを、やさしくご説明します。
なぜ「帯状」なの?〜名前の由来〜
角膜炎というのは、角膜(黒目の表面)に炎症が起きることですが、「帯状」とつくのは、傷の形が“横長に帯のように”広がることが多いためです。目の表面は涙によって常に潤されていますが、このバランスが崩れると、乾いた部分に傷がつきやすくなり、炎症を起こしてしまうのです。二酸化炭素が空気に触れている部分から空気に逃げるのでその部分にカルシウムが沈着するという説明をする人もいます。顔面神経麻痺で見られる露出性角膜炎とはちょっと異なる対応を考える必要もあります。
主な原因
帯状角膜炎の原因はいくつかありますが、以下のような状態が関係することが多いです:
- ドライアイ(乾き目)
目が十分に潤っていないと、角膜が傷つきやすくなります。 - 睡眠中の目の乾燥
特に夜間、目が少し開いて寝ている人では、朝起きたときに痛みを強く感じることがあります。 - 点眼薬の副作用
一部の防腐剤入りの点眼薬を長期に使用していると、角膜が傷つきやすくなります。 - 角膜知覚の異常
神経の働きが低下している場合(例えば糖尿病や帯状疱疹後など)、傷があっても治りにくくなり、帯状に広がることがあります。
なぜこんなに痛いの?
角膜には非常に多くの神経が集まっており、私たちの体の中でも最も敏感な場所の一つです。
ちょっとした傷でも「砂が入ったような異物感」「刺すような痛み」「光がまぶしい」と感じます。特に傷が帯状に広がると、まばたきのたびに痛みが走り、日常生活がつらくなることがあります。
治療とケア:どうすれば良くなるの?
帯状角膜炎の治療にはいくつかの方法があります。以下は主な対応策です:
- 人工涙液などの点眼
目の乾きを防ぐことで、傷の治りを助けます。無防腐剤の点眼を選ぶことが大切です。 - 角膜保護薬の使用
ヒアルロン酸やレバミピドなど、角膜の傷の修復を促す点眼薬が処方されることがあります。 - 眼軟膏の使用(夜間の保護)
夜、目を閉じている間に乾燥しないように、軟膏で潤いを保つことが有効です。 - 涙点プラグやアイパッチ
重症例では、涙の排出を防ぐための「涙点プラグ」や、就寝時の保護目的でアイパッチを使用することもあります。 - 原因の除去・生活習慣の見直し
例えばエアコンの風が直接当たらないようにする、長時間のスマートフォン使用を避ける、なども大切です。
まとめ:痛みは放置せず、早めの相談を
帯状角膜炎は、見た目には分かりにくいこともあり、ご自身ではただの「疲れ目」や「乾き目」と感じてしまうかもしれません。しかし、放っておくと傷が深くなり、視力に影響を与えることもあります。
目の痛みや異物感を感じたら、なるべく早めに眼科を受診してください。
◎ 追記:band keratopathy(バンド角膜症)における角膜表面への石灰沈着の仕組み
band keratopathy(バンド角膜症)における角膜表面への石灰沈着の仕組みについて、医療知識のない方にもわかりやすく説明した文章です。
【バンド角膜症って何?】
バンド角膜症とは、目の表面(角膜)にカルシウム(石灰分)が沈着して白く濁る病気です。特に角膜の中央付近、黒目の部分に帯(バンド)のような形で白いにごりが現れるため、「バンド(帯状)角膜症」と呼ばれます。
【なぜ石灰(カルシウム)が沈着するの?】
石灰が角膜にたまる理由は、角膜の表面にある「上皮」よりも下の「基底膜」や「前弾性層」という層にカルシウムやリン酸といったミネラル成分が異常に沈着することによります。
このような沈着が起こる背景には、以下のような要因があります:
① 涙のバランスが乱れる
涙には、カルシウムやリンが少量含まれていますが、乾きやすくなったりpH(酸・アルカリの度合い)が変化したりすると、カルシウムとリンが結びつき、石のように固まることがあります。
② 慢性の炎症や病気がある
目の炎症が長く続いたり、ぶどう膜炎や慢性角膜疾患などの病気があると、角膜がダメージを受け、カルシウムが沈着しやすくなります。
③ 全身の代謝異常
腎臓が悪い場合や、血液中のカルシウムやリンのバランスが崩れている人では、角膜にもカルシウムが沈着しやすくなることがあります。
【どうしてバンド(帯)状に出るの?】
角膜の中央部分(瞳孔の高さあたり)は、涙の流れや蒸発のバランスが微妙なため、カルシウムが沈着しやすい環境になりやすいのです。これが、水平方向の帯状(バンド)に石灰がたまる理由です。
【治療方法はあるの?】
石灰の沈着は視力に影響することもあるため、必要に応じて以下の治療を行います:
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EDTAという薬剤で溶かす:カルシウムを溶かす薬を使って、表面から除去します。(実際使うのは困難です)
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角膜表層切除:沈着が深い場合には、表面を削ってきれいにする手術を行うこともあります。(見かけの改善には有効ですが、処置当日は疼痛が増すこともあるでしょう)
【まとめ】
バンド角膜症は、涙や角膜の環境の変化によって、カルシウムが角膜に帯状にたまってくる病気です。目がかすんだり、白く見えたりする原因になることもあるため、症状が気になるときは眼科での検査が大切です。
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