眼瞼痙攣は頭頚部ジストニアに含めて捉えられており、自分の意思で目を開いていることができないことをその主な症状とします。その症状は①非随意的で強いな閉瞼を主とする運動症状、②羞明や眼痛を含む感覚過敏症状、そして③精神的な気分の落ち込み(鬱)を主とする精神症状を含みます。この中で②の感覚過敏がとても強くて、「一日中暗くした部屋に閉じこもる」に至り、眼球自体に病変が見いだせないにも関わらず実質的に光の感覚器としての目を使うことができないものを若倉雅登先生は眼球使用困難症候群と呼んでいます。
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若倉先生は:
救済されない日常生活の不自由
~「眼球使用困難症」をめぐって~第10回で、次のように述べています。
- 眼球使用困難症候群とは:目が疲れて使えない、目尻や目の奥に痛みがある、視覚を利用した情報取得ができないなどの症状を持つ患者の状態を説明する呼称。眼科医として適切な病名を付けることができない。1
- Fさんのケース:20歳女性で、近視が強く、眼鏡をかけると気分が悪くなる。2症状は3年前から始まり、学業にも支障が出た。3精神科医は「身体症状症」と診断したが、視覚障害として障害者手帳の対象にはならなかった。
- 医学モデルの問題点:医学は原因不明で特定の検査法がない疾患に対して操作的診断を行うが、身体科では器質的病変が見つからないと精神医学的見地から見られがちで、患者の苦痛や生活のしづらさを中心に据えた障害者認定システムがない。
- 患者中心型病名の重要性:眼球使用困難症候群のように、患者の症状に注目した病名は、将来の臨床医学の発展の上で非常に重要な視点になると主張する。4医学の側からではなく、当事者や支援者、福祉関係者からの声が必要だと訴える。
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- 私、清澤も眼瞼痙攣患者を多数診察していると実際にこのような患者に遭遇することがあります。私は私が考えた「眼瞼けいれん治療を成功させる10のコツ」に従って治療開始を試みますが、本当に眼球使用困難症候群に相当する重症の患者は若倉先生の研究グループに診療と加療を依頼することが多いです。
- 眼球使用困難症の研究は厚生省に任命された研究班が行っています:
厚生労働省は、眼球使用困難症候群により日常生活に困難を来している方々の支援策に関する調査を行っています。この調査は、社会システム株式会社によって実施されており、具体的な調査内容は以下の通りです:
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周知策の検討・周知活動の実施:
- リーフレットの作成: 羞明等の症状を知らない一般の方や医師向けに、わかりやすく簡潔なリーフレットを作成し、広く周知しています。
- シンポジウムの開催: 羞明等の症状を知らない人々(一般の方や医師)の理解促進を目的として、オンラインでシンポジウムを開催し、録画映像をYouTubeで公開しています。
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重症度に係る検討:
- 昨年度のアンケート結果を整理し、重症度キーワードを探索しています。
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支援策を検討するための調査:
- 症状を有する人々に対してアンケート調査を実施し、重症度の評価指標を検討しています。
この調査は、眼球使用困難症の実態を明らかにし、適切な支援策を進めるために重要な取り組みとなっています12 。その詳しい情報は、NPO「目と心の健康相談室」(荒川和子理事長、若倉雅登副理事長)に問い合わせることもできます。
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