眼瞼痙攣

[No.2591] 眼瞼痙攣の自然経過は?

 眼瞼痙攣の初診で来院した患者さんにもっともよく聞かれるのは、完治の可能性と今後の自然経過でしょう。今回はこの眼瞼痙攣の自然経過の質問を取り上げます。

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質問: 眼瞼痙攣の自然経過は?

回答:眼験けいれんは、瞬目の増加、差明、眼周囲の連和感などの初発症状で発症することが多く、悪化していくにしたがって眼瞼の不随意運動や開験困難が起こる。治療を行わない場合の自然経通は、大多数が徐々に悪化し、変化しないおよび改善するがそれぞれ1割程度と報告されている(1A)

稀ではあるが、自然に完治する(1%程度)こともあると報告されている。経過中に眼周囲だけでなく、口周囲などにも症状が拡大することもある。薬剤性眼瞼けいれんにおいては、原因薬の中止により7割の者で症状の改善がみられ、そのうち数%程度の者は完治したと報告されている。

解説: 眼瞼けいれんのほとんど(86%)は数週間かけて徐々に発症するが、数日または数時間の間に急性に(14%)発症することもある)

75%は最初から両限性の発症だが、25%は片眼発症から両眼性へ移行する。 Jankovicらは、眼けいれん思者250例について治療を行わない場合の自然経過について調べたが、75%が徐々に悪化し、12%が変化なく、13%が改善したと報告している。稀ではあるが、自然に完治する(1%)こともある。Grandasは、経過観察中の眼験けいれん思者264例の11%で自覚的な完全(5%)または部分的(6%)寛解がみられたが、そのうちのほとんどは再発し、再発を起こさずに寛解したのは完全寛解1例,部分的寛解4例のみだったと報告している。また、ポツリヌス治療を繰り返し施行するにしたがって、徐々に投与間隔の延長が可能になる症例もあるが、眼瞼けいれんが完治しポツリヌス治療が不要となる症例はほとんどない。

・ポツリヌス治療無効例に対して眼輪筋切除術、失行症を伴う眼験けいれんに対して前頭筋吊り上げ病が施行されることがある、どちらの術式も症状を改善し、ポツリヌス治療が効きやすくなったり、投与間隔の延長がみられるなどの効果はあるものの,眼瞼けいれん自体が完治することはほとんどないと報告されている。経過中に眼周囲だけでなく、口周囲などにも症状が拡大することもある。他方Wakakuraらは、エチゾラム、ソルビデム、プロチンラムなどの長期扱与中に発注した薬剤性眼験けいれんと思われる186例のうち、132例で原因薬の中止に成功し、そのうち93例で眼瞼けいれんの症状の改善がみられたと報告している。さらに、改善した症例のうち 5例は眼験けいれんが完治し、それ以上の治療が不要になったと報告している。

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清澤の追加コメント:ボトックスは大半の例で一時的には開瞼維持困難の症状を減弱させるから、その効果を差し引いてみれば、悪化1割、不変8割、改善1割程度ということにもなるだろう。詳しい分析は上の通りでよいだろう。明らかな原因併用薬や、神経内科的な原因疾患のあるものならば、その原因に対する対応による症状軽快への効果の追加が期待できるだろう。通院を続けて、ある程度の罹病期間が過ぎたら、完解を期待するよりも、ボトックスとその他の治療を受けながら、この疾患との共存を考えるほうが本人の生活の質の低下は少なくて済むかもしれない。

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