眼瞼痙攣

[No.12] 眼瞼ミオキミア(lid myokymia)、眼輪筋波動症とは

清澤のコメント:瞼がぴくぴくするから眼瞼痙攣か片側顔面痙攣ではないか?と言って初診で受診する患者さんの多くがこの眼瞼ミオキミアです。蓄積した目の疲労などがその原因と言われ、多くは一か月以内に収まります。

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まぶたの軽い痙攣を、一般に「眼瞼ミオキミア」といい、 日本語の医学用語では「眼輪筋波動症」と呼びます。これはありふれたもので、ほとんどはまもなく自然に緩解します。

眼瞼ミオキミアとは: 「ミオキミア 」は、不随意で自然発生的な筋肉の震えを意味する用語として広く使われます。ミオキミアの動きのほとんどは、刺激を感じる程度の軽いもので、多くの人が目の周りの筋肉で経験していると思います。下まぶたに起こることが多いですが、上まぶたに見られることもあります。 眼瞼ミオキミアは、片方の目の外下の部分に数秒から1分くらい続く、まぶたのぴくぴくとして自覚することが多いです。筋肉の軽い痙攣で、目が閉じてしまうほどの強い筋収縮ではありません。

眼瞼ミオキミアは一時的であり、治療なしでやがて消失します。ぴくぴくする動きが数秒から数分間続きますが、時には断続的に数ヶ月続くこともあります。あくまで一時的で、長期的問題は起こさぬので、医師はあまり心配しません。

眼瞼ミオキミアの症状 :主な症状は、制御できない不随意なまぶたの筋肉の動きです。通常、数秒間でおさまりますが、症状が突然現れたり、消えたりを繰り返して数日から稀に数ヶ月間続くこともあります。好発年齢は成人で、小児には少ないです。

眼瞼ミオキミアの原因: ミオキミアの正確な原因は不明ですが、特定の因子が眼瞼ミオキミアの発生の誘因となり、また、症状を増加させます。これらの因子には、カフェインの消費、不安、ストレス、睡眠不足、長時間のデジタルデバイス使用やテレビ視聴、また、アルコールの飲用および特定の薬物なども挙げられます。稀に、アレルギー反応によって引き起こされることもあります。

眼瞼ミオキミアの治療と対処法: 眼瞼ミオキミアの症状は、数週間かかるものの、通常は治療なしで解消します。 繰り返して症状が出たり、長期に亘って症状が続いたりしたら、眼科を受診してください。 また、痛みを伴う痙攣や眼脂、羞明などの光に対する感受性の増加、ぼやけ、あるいはまぶたの腫脹などをともなう場合には、受診が必要です。

痙攣が増悪し、長期に亘るときには、適切な治療を受ける必要があります。 眼瞼ミオキミアの症状に対して、いくつか自宅で出来る対処があります。 眼の周りを暖める、あるいは冷湿布を用いて冷やすことにより症状が緩和することが有ります。

また、ミオキミアの発症を防ぐあるいは、カフェイン消費や過労、アルコール摂取など、発症の誘因となるものを避けることも大切です。ミオキミアがアレルギーによる場合には、医療機関で抗ヒスタミン薬を処方してもらうことで発症が抑えられることもあります。

医療機関を受診した場合、医師はその原因を特定し、まぶたの痙攣の頻度を減らす対処をします。例えば、近年増加しているデジタルデバイスの長時間使用による眼精疲労が誘因と見られる場合では、多くの患者さんがドライアイを合併し、症状を悪化させていることが有るため、涙液減少を緩和する点眼薬を処方します。他の原因を含めた眼精疲労が基礎にあれば、ビタミン剤点眼。抑肝散加陳皮半夏を神経症の診断で処方することもあります。

気を付けるべき類似の疾患 :眼瞼ミオキミアに似た疾患で治療法の異なるものは? 眼瞼ミオキミアを兆候として含むことが有る状態には、ドライアイ、まぶたの炎症である眼瞼炎、角膜のわずかな擦り傷、内向きにまつげの倒れる睫毛内反、眼圧の上昇する緑内障、光に対する過敏症、ぶどう膜炎などが挙げられます。

まぶた周囲の筋肉が強い痙攣を起こすものに良性原発性の「眼瞼痙攣」があります。これは眼周囲の筋肉のジストニアと呼ばれる異常運動を起こす障害です。また、ウインクのように片側の眼画閉じてしまう症状を示す「片側顔面痙攣」もあります。これは、顔面神経を刺激する小さな動脈によって顔面神経が圧迫刺激されて引き起こされるものです。これらの疾患である場合には、本格的な治療を必要とします。

眼瞼痙攣や片側眼瞼痙攣が疑われる場合には、薬物を使用して問題を軽減することになります。具体的には、ボトックス(ボツリヌスA毒素)を罹患したまぶたの眼輪筋に注射し、一時的な麻痺を起こすことで筋の痙攣を止めることができます。 この処置で、まぶたが痙攣するのを3ヶ月程度まで持続的に防ぐことができます。また、場合によっては抗てんかん薬の内服により症状を緩和させることもあります。

おわりに:ほとんどの場合、眼瞼ミオキミアは心配するものではありません。単に、眼瞼筋肉の一時的な痙攣と考えてよいでしょう。力フェインとアルコールの消費を減らし、デジタルデバイスの使用時も小まめに休憩をとるなど、より多くの体息をとることが症状の発生を減少させることにつながります。

清澤源弘(きよさわ・もとひろ) 1978年 東北大学医学部医学科卒業, 2021年自由が丘清澤眼科開設院長就任  健康教室(School health education)2018.10 第815集 東山書房 p96-98の自著記事に加筆しました。

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