眼瞼痙攣

[No.2786] 反復したボトックス治療の眼瞼痙攣に対する効果は減弱するか?:

眼瞼痙攣に対するボトックス治療の反復効果について

眼瞼痙攣に対するボトックス治療を受けている患者様から、治療効果が長期間続かない、または繰り返しの投与によって効果が弱まったとのご意見をいただくことがあります。

ボトックス(ボツリヌス毒素)は眼瞼痙攣の治療に非常に有効ですが、いくつかの理由により、時間の経過とともに効果が薄れることがあります。以下の点についてご理解いただければ幸いです。

  1. 治療効果の持続時間: ボトックスの効果は通常、数週間から数ヶ月持続します。しかし、個人差があり、効果の持続時間が短くなる場合もあります。日本では、8週間以内には反復投与を行わず、追加(ブースター)投与をしないことが定められています。

  2. 繰り返し投与による効果の変化: 長期間にわたり繰り返しボトックスを投与することで、効果が弱まることがあります。これは、身体がボトックスに対する耐性を持つようになるためです。また、初回注射ではスパスムが最も強く、反復時の投与ではその直前でのスパスムが初回投与時に比べて弱まっているため、2度目以降のボトックス投与では、この機序を介して効果が初回投与に比べて弱いと感じられる可能性があります。

  3. 抗体形成: ボツリヌス毒素に対する中和抗体が生成されることがあります。体の免疫系は毒素を異物として認識し、それを中和する抗体を生成します。これらの抗体は毒素や投与される薬剤に混入している蛋白に結合し、標的の筋肉にボツリヌス毒素が作用するのを妨げます。この現象は、頻繁で高用量の注射で発生する可能性が高くなります。

  4. 筋肉の適応: 時間の経過とともに、ボトックスを繰り返し注射されるる筋肉が適応する可能性があります。これには、筋肉のアセチルコリン受容体の変化や筋繊維の構成の変化が含まれ、筋肉が毒素に反応しにくくなります。

  5. 神経の発芽: ボトックスが神経信号をブロックして筋肉を弱めた後、体は筋肉とのコミュニケーションを再構築するために新しい神経終末を成長させることで反応する可能性があります(神経の発芽 sprauting)。これらの新しい神経終末は、最終的にブロックされた信号を補い、ボトックス注射の全体的な効果を低下させますが、

    神経芽は最終的に新しい神経筋接合部を確立し、筋肉活動は徐々に戻ります。しかし、新しい研究では、この新しい神経芽がやがて収縮し、元の接合部が機能に戻ることを示しています。

  6. 技術的要因: 毒素の正確な配置、投与量、毒素の希釈などの注射技術の変動も結果に影響する可能性があります。注射が正確に投与されない場合、効果は時間の経過とともに低下する可能性があります。

  7. 患者の個人差: 各患者の生理機能は独特であり、一部の個人は自然にボトックスに対する耐性を発症する傾向が高い場合があります。遺伝、全体的な健康状態、治療中の特定の状態などの要因はすべて、時間の経過とともにボトックスがどれだけうまく機能するかに影響を与える可能性があります。

これらの問題を軽減するために、医療提供者は、投与量の調整、注射部位の変更、注射間隔の延長、または別のボツリヌス毒素製剤への切り替え(現在日本国内では不可能ですが、ボトックスからゼオミンへの切り替え)などの戦略が推奨される場合があります。さらに、注射の頻度を減らし、最小有効用量を使用することで、抗体形成のリスクを最小限に抑え、治療の効果を維持することができます。

ご不明点やご心配な点がございましたら、遠慮なくお知らせください。

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