片側顔面痙攣に対するして私はボトックス投与を第一選択にしておりますが、難治性であったり、この疾患と決別したいという希望が患者さんに強い場合には、この症状に対して微小血管減圧術(MVD: Microvascular Decompression)が行われることがあります。その対象となる血管および関連情報について以下に説明します。
対象となる血管
片側顔面痙攣は、顔面神経(第7脳神経)が血管による圧迫を受けることで生じます。主に以下の血管が原因となります:
- 前下小脳動脈(AICA: Anterior Inferior Cerebellar Artery)
- 椎骨動脈(Vertebral Artery)
- 後下小脳動脈(PICA: Posterior Inferior Cerebellar Artery)
これらの血管が顔面神経の根部付近で圧迫を引き起こし、症例ごとに症状を誘発します。
手術の概要
- 目的
圧迫を引き起こしている血管と顔面神経を分離し、神経へのストレスを取り除くことです。 - 手技
- 全身麻酔下で行われます。
- 後頭蓋窩に小さな開頭を行い、顕微鏡を用いて顔面神経の根部を露出します。
- 圧迫を引き起こしている血管を確認し、圧迫部位にテフロンスポンジや他の緩衝材を挿入して血管を神経から離します。
- 手術時間
通常、約2~4時間程度かかります。
手術成功率(有効率)
- 短期的成功率(症状改善):90~95%程度。
- 長期的成功率(症状の持続的消失):80~90%。
- 特に、圧迫の明確な血管が確認された場合には高い成功率が期待されます。
- 術後早期に改善しない場合でも、数週間~数か月で改善することが多いとされています。
合併症と頻度
微小血管減圧術は一般的に安全な手術とされていますが、いくつかの合併症のリスクがあります。
- 顔面神経麻痺
- 一時的:5~10%程度。
- 永続的:1%未満。
- 聴力障害
- 術中の迷走神経や内耳動脈の損傷により発生。
- 一時的な難聴:5~10%程度。
- 永続的な聴力低下:1~2%。
- 感染症
- 術後の髄膜炎や創部感染:1~2%以下。
- 小脳や脳幹の損傷
- 非常に稀(<1%)。
- 深刻な神経学的後遺症を残す可能性があります。
- その他
- 血腫形成:1%未満。
- 頭痛やめまい:術後数週間以内に改善することが多い。
MRIでの診断と成功率
MRIで顔面神経と小脳動脈の圧迫が明確に確認されている場合、手術の成功率は非常に高い(95%程度)とされています。
手術の成否は、血管の圧迫部位の特定と、術中の適切な操作に大きく依存します。術前に詳細な画像診断を行い、適切な手術計画を立てることが重要です。
(私、清澤は眼科医でありこの手術は行いませんが、この手術に習熟した脳外科の術者を選ぶことが、この手術を成功させる第一歩と考えています。脳外科医への紹介についてはご相談ください。)
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