まぶしさの中で願うこと ― 七夕と眼瞼痙攣の話
7月7日は七夕。夜空を見上げ、織姫と彦星の再会に想いを馳せるロマンチックな日です。けれども、「夜空すら見上げられない」――そんなつらさを抱える方もいます。
『星空が見たい!―物を見る仕組みと網膜色素変性症がおきるメカニズム』(医学書院、2003年4月刊)という書籍では、和田裕子先生と玉井信先生が、網膜色素変性症(RP)の原因や病態、基礎および臨床の研究について、たった48ページにわかりやすくまとめています。大きなイラストや点字・触図も掲載され、視覚障害のある患者さんやそのご家族、教育者、医療従事者まで、幅広い層が理解できる構成になっています。患者中心のインフォームド・コンセント時代にふさわしい、まさに入門書の良書といえるでしょう(wada-ganka.com、igaku-shoin.co.jp、kinokuniya.co.jp 参照)。
同じように、「星空を自分の目で見てみたい」と願うのは、網膜疾患の患者さんだけではありません。眼瞼痙攣(がんけんけいれん)や眼球使用困難症といった疾患に悩む方々も、その願いを抱いています。
眼瞼痙攣は、自分の意思とは無関係にまぶたが閉じてしまう病気で、まぶしさ(羞明)のために目を開けていられないこともあります。強い日差しだけでなく、曇り空の明るさすら苦痛になることもあります。この病気の方にとって「星を見る」という行為は、「自分の目で世界を感じる」という希望の象徴なのです。
ボトックス注射、涙点プラグ、遮光レンズ、生活習慣の工夫などを通じて症状が軽減し、「今年は夜空を見られました」と笑顔で話される患者さんに出会うと、私たち医療者も喜びを分かち合いたくなります。
七夕の短冊には、「健康になりたい」「自由に目を開けたい」「まぶしさから解放されたい」といった願いもきっと書かれていることでしょう。その一つひとつが、切実な祈りであり、夜空の星へと届けたい思いです。
眼瞼痙攣は、適切な診断と治療により、症状の軽減が可能です。「明るさがつらい」と感じたとき、それが病気のサインかもしれないということを、ぜひ多くの方に知っていただきたいと願っています。
今年の七夕、もし星空を見上げることができたなら、それは患者さんにとって、大きな一歩となることでしょう。
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