眼瞼痙攣

[No.4108] まぶしさに悩む眼瞼けいれん患者に新しい光対策 ― 高密度サングラスの効果

以下は、若倉雅登氏らの論文「High-Density Glasses in Blepharospasm: Influence of Migraine and Early Morning Effects」(Masato Wakakura & Akiko Yamagami, Cureus, 2025年10月15日発表)をもとに、一般読者にもわかりやすくまとめた説明文です。


まぶしさに悩む眼瞼けいれん患者に新しい光対策 ― 高密度サングラスの効果

背景

眼瞼けいれん(benign essential blepharospasm:BEB)は、まぶたが自分の意思に反してけいれんしてしまう病気で、多くの患者が「まぶしさ(羞明)」や「光過敏」を訴えます。これらの症状は、眼そのものの病気ではなく、光の刺激が脳に過剰に伝わることで、視覚や感覚をつかさどる神経(特に視床)の興奮が強くなり、目を開けていられなくなると考えられています。
また、この病気の一部の患者では「朝は楽だが、日中に向かうほど症状が悪化する」という特徴があり、これを「早朝効果(early morning effect)」と呼びます。これは、夜間に光刺激をほとんど受けないことで一時的に脳の興奮が鎮まるためと推定されています。

目的

本研究の目的は、脳への光入力を強力に抑えることで、眼瞼けいれんの症状が軽くなるかどうかを検証することでした。特に、早朝効果のある患者や片頭痛を合併する患者に対して、光刺激を制限する「高密度遮光眼鏡(HDグラス®)」が有効かどうかを調べました。

方法

光過敏を伴う眼瞼けいれん患者61人(女性52人、男性9人、年齢21~81歳、平均51.5歳)が参加しました。参加者には、可視光透過率わずか1.5%という非常に暗い特殊眼鏡(東海光学株式会社製)を支給し、1日2~3回、1回20分以上、薄暗い部屋で装用してもらいました。この装用を少なくとも2か月間続けてもらい、
①装用中、②外して30分後、③2か月後の3つの時点で、症状の変化をアンケートで評価しました。

結果

61人のうち39人(約64%)に「早朝効果」があり、29人(約47%)には片頭痛の既往が認められました。全体として、半数以上の患者が何らかの改善を報告しました。特に「早朝効果」のあるグループでは、装用中・装用後・2か月後のいずれの時点でも改善率が有意に高く、光刺激を制限することが症状の軽減に有効であることが示されました。
一方で、片頭痛を持つ人は光過敏を伴う傾向が強く、眼瞼けいれんの発症リスクとも関連している可能性が示唆されました。

結論

光刺激が脳の視覚中枢や視床を過剰に刺激することで、眼瞼けいれんや光過敏が引き起こされるという仮説を裏付ける結果となりました。可視光をほとんど通さない高密度遮光眼鏡(HDグラス®)を短時間装用することで、脳の過剰な興奮を抑え、眼瞼けいれんの症状を和らげる可能性があります。特に朝に症状が軽い「早朝効果」のある患者では、光を遮ることが脳の負担を減らす有効な手段となるかもしれません。
ただし、今回の研究は比較対照群を設けていない予備的な介入研究であり、今後は無作為化比較試験による検証が必要です。

清澤院長のコメント

この研究は、眼瞼けいれんの発症に「光入力の過剰」が関係していることを臨床的に示した重要な報告です。実際の診療でも、遮光レンズを上手に使うことで羞明やけいれんが軽くなる患者は多くみられます。高密度サングラスのような光制御療法は、副作用の少ない補助的治療として今後注目されるでしょう。


Reference:
Wakakura M, Yamagami A. High-Density Glasses in Blepharospasm: Influence of Migraine and Early Morning Effects. Cureus. 2025 Oct 15;17(10):e94664. doi:10.7759/cureus.94664.

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