顔面けいれん・眼瞼痙攣と「光過敏」―若倉先生講演より
先日開催された顔面けいれん・眼瞼痙攣の患者会交流会において、若倉先生がビデオ参加という形で講演をされました。今回はその内容、とくに2025年11月の第63回日本神経科学会で発表された最新研究についてご紹介します。
眼瞼痙攣(がんけんけいれん)という病名は、「まぶたの運動異常」という印象を与えます。しかし実際の臨床現場で患者さんを診ていると、症状の本質は単なる運動障害ではないことに気づきます。重症になると、患者さんは光を極端に避ける生活になります。屋外に出られない、室内照明もつらい、テレビやスマートフォンも見づらい。このように生活の質を大きく損なう最大の要因は「光過敏(羞明)」ではないか――これが若倉先生らの長年の問題意識です。
従来、日本語の「痙攣」という言葉は筋肉の異常収縮、つまり“運動”に焦点を当てています。しかし実態は感覚異常、特に光に対する過剰反応が症状を悪化させている可能性がある。今回の研究発表は、その仮説を神経科学的に検証するものだったとのことです。
私たちの脳には、光刺激を処理する視覚経路だけでなく、光の「不快さ」や「痛み」を感じる経路が存在します。片頭痛の患者さんが光を嫌がるのと同様、眼瞼痙攣でも光刺激が脳内の特定の回路を過剰に興奮させ、それが瞬目反射や眼輪筋の異常収縮につながっている可能性があります。
つまり、
光刺激
↓
脳内の過敏な回路が活性化
↓
まぶたの異常収縮
↓
さらに光がつらくなる
という悪循環が起きているのではないか、という考え方です。
この視点は治療戦略にも大きく影響します。これまでの標準治療はボツリヌス毒素注射で、過剰に収縮する筋肉を抑制する方法が中心でした。これは非常に有効な治療ですが、感覚側の異常までは直接改善できません。
もし光過敏が重要な要素であるならば、
・遮光眼鏡や波長選択フィルター
・照明環境の調整
・脳の過敏性を抑える内服薬
・神経回路の可塑性に着目したアプローチ
といった「感覚側への介入」も重要になります。
実際、FL-41系のフィルターが有効な患者さんがいることは、臨床現場でも経験的に知られています。これは単なるサングラスではなく、特定波長の光刺激を減らすことで脳の過敏反応を抑える可能性があると考えられています。
今回の神経科学会での報告は、眼瞼痙攣を「運動障害」だけでなく「感覚処理異常を伴う神経回路疾患」として再定義する流れを後押しする内容でした。
患者さんの中には、「まぶたの問題なのに、なぜこんなに光がつらいのか」と疑問に思われる方も少なくありません。しかしそれは決して気のせいではなく、脳内の回路レベルで説明可能な現象である可能性が高まっています。
今後、感覚と運動を統合した新しい治療アプローチが進めば、生活の質のさらなる改善が期待できるでしょう。
眼瞼痙攣は決して「まぶたの筋肉だけの病気」ではありません。光との関係、脳との関係を理解することが、次の治療の扉を開く鍵になるのです。
引き続き、最新の研究動向を追いながら、臨床に役立つ情報を皆さまにお届けしてまいります。
必要でしたら、
・患者会向けにさらに平易な1500字版
・学術的視点を強めた医師向け版
・FL-41遮光との関連を強調した改訂版
もお作りします。



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