前眼部光干渉断層計を用いた水晶体形状と隅角指標の関連
栗山 卓也, 江口 秀一郎 江口眼科病院、日眼会誌 第128巻第9号657-665
清澤のコメント:本日届けられた日眼会誌の論文の抄録を採録します。白内障では、水晶体が前方に変位して虹彩を押すために全貌隅角が狭くなっているのかと思っておりましたが、この論文では狭隅角眼では水晶体の前面にある突出も強くなっているという事を示しています。とても分かり易い論文です。この仕事は函館市江口眼科病院という個人病院でなされた仕事である点も注目されます。
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目的:隅角閉塞に水晶体の位置や厚さが関与することが報告されているが,水晶体形状がどのように関与しているかの検討はきわめてわずかしか報告されていない.前眼部光干渉断層計(AS-OCT)を用いて,水晶体前面および後面曲率が隅角形状や他の眼球形状とどのように関連するかを検討した.
対象と方法:1施設で白内障手術を施行予定の原発閉塞隅角病を含む64名95眼を対象に,AS-OCTを用いて前房深度(ACD),lens vault(LV★),水晶体厚(LT),水晶体前面曲率半径,水晶体後面曲率半径,隅角開大度の指標としてのtrabecular-iris space area 500(TISA 500)を測定し,年齢,眼軸長(AXL)を含めて,水晶体曲率半径が関連する因子や隅角指標との関連について解析を行った.
結果:水晶体前面曲率半径はAXL(ρ=0.66,p<0.0001),ACD(ρ=0.75,p<0.0001),TISA 500(ρ=0.58,p<0.0001)との間には有意な正の相関が,LV(lens vaultρ=-0.73,p<0.0001),LT(水晶体厚ρ=-0.61,p<0.0001)との間には有意な負の相関が認められ,年齢(p=0.0516)との間には有意な相関関係は認められなかった.水晶体後面曲率半径は水晶体前面曲率半径と異なり,年齢(p=0.0574),AXL(p=0.2819),ACD(p=0.3360),LV(p=0.9352),LT(p=0.1555),TISA 500(p=0.4277)との間に有意な相関関係を認めなかった.水晶体前面と後面の曲率半径の間には,有意な相関(ρ=0.21,p=0.0443)を認めた.
結論:隅角指標は水晶体前面曲率半径との間に相関を認めたが,水晶体後面曲率半径とは相関を認めなかった.狭隅角眼では水晶体の位置や厚さのみならず水晶体形状にも一定の変化が生じている可能性が示された.(日眼会誌128:657-665,2024)
キーワード
水晶体前面曲率半径, 水晶体形状, 前眼部光干渉断層計(AS-OCT), 隅角, 水晶体後面曲率半径
Corresponding Author(別刷請求先)
〒040-0053 函館市末広町7-13 江口眼科病院 栗山 卓也
★清澤脚注:Lens Vaultは、水晶体の前面と角膜の後面との距離を測定する指標です。この測定は、特に以下のような状況で重要です:
- 緑内障の評価:隅角が狭くなる原因として、水晶体の前方移動が考えられるため。
- 白内障手術の計画:水晶体の位置を正確に把握することで、手術計画やレンズ選択に役立ちます。
- ICL(有水晶体眼内レンズ)手術:ICLの適切なサイズを決定するために、水晶体と角膜の距離を評価します。
このように、Lens Vaultの測定は、眼科診療において非常に重要な役割を果たしています。
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