開瞼失行症(Apraxia of Lid Opening, ALO)
**開瞼失行症(Apraxia of Lid Opening, ALO)**は、まひを伴わない運動障害で、眼瞼を閉じた後に正常な筋機能を持ちながらも、意図的に瞼を開けることが難しくなる状態を特徴とします。眼瞼痙攣や進行性核上性麻痺に伴って見られ、開瞼失行症が単独で見られることは稀です。
症状
- ALOを有する患者は、眼瞼を閉じた後に自発的に瞼を開けることができなくなります。
- この困難は一時的な場合もあり、多くの場合、手で瞼を持ち上げることで改善します。
- 瞼を開けようとする際、前頭筋を強く収縮させたり、頭を後ろに反らしたり、口を開けたりする動作が見られることがあります。
原因と神経機序
- ALOの正確な原因は完全には解明されていません。
- 眼瞼運動の上位中枢制御に障害があると考えられています。
- 自発的な眼瞼の開閉には、上眼瞼挙筋の活性化と眼輪筋の抑制が必要ですが、電気生理学的な研究では、ALOは上眼瞼挙筋の不随意な抑制、眼輪筋の持続的な収縮、またはその両方によって生じる可能性があることが示されています。
関連する疾患
ALOは、以下のような他の神経疾患と併発することが多いです:
- 本態性眼瞼痙攣
- 進行性核上性麻痺(PSP)
- パーキンソン病
- 運動ニューロン疾患
- シャイ・ドレーガー症候群(多系統萎縮症)
- 非優位半球、内側前頭葉、基底核、脳幹上部などに病変がある場合も関連しています。
治療
- ボトックス注射
眼輪筋の筋活動を抑制し、眼瞼の開閉を促すため、眼輪筋の前板部分にボツリヌス毒素を注射します。 - 薬物療法
特にパーキンソン病の患者では、レボドパがALOの症状改善に効果を示す場合があります。 - 外科的治療
前頭筋吊り上げ術や上眼瞼切除術などの手術が、他の治療法で効果が得られない場合に検討されます。
注意点
- ALOの早期診断と適切な治療は、患者の生活の質を向上させるために重要です。
- 背景にある神経疾患を特定するために、包括的な評価が必要です。
この情報は、ALOの診断と治療をサポートする国際的なコンセプトを基にしています。
ユーチューブで示された進行性核上性麻痺に伴う開瞼失行の動画を採録いたします。
コメント