白内障

[No.2439] 白内障手術と眼内レンズ:単焦点から多焦点まで:岡部仁先生講演聴講印象録

仙台市平成眼科の岡部仁先生の白内障に関する講演を「53病診連携研究会」(大学の同級会)で、聞いてきました。その聴講印象記です。聴衆の中の眼科医は私一人でしたが、とても役立つ話が聞けました。

題して「、こんなにある眼内レンズ、選ぶ疑問に答えます。」

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国内の2021年の白内障手術件数は163万件で、70歳代にピークがあります。先ず白内障あるある物語:75歳男性医師Aさんは眩しさが気になり、視力低下も自覚したので緑内障を専門とする60歳の女性B医師を受診し、まだ矯正視力も良いしまだ手術は不要と診断された。そこで55歳の白内障手術を年間800例行うボリューム術者のC医師を受診。其処で行われたのはグレア視力(まぶしい環境下での実用視力)とコントラスト感度検査(明暗や色の濃淡を見分ける)だった。Aさんは白内障手術を受け、もやもやが取れたと喜んだ。

Aさんが視力1.0でありながら見難さを自覚したのは、コントラスト感度低下や、まぶしさ増加で視力の質が落ちていたから。

白内障で水晶体が濁ると入る光は前方散乱と後方散乱を増す。収差や色収差でピントも会いにくい。だから、矯正視力は1.0でもコントラスト感度低下やグレア環境下での視力が低下していれば白内障手術を考えても良い。

白内障手術のリスク:術後眼内炎(感染)は0.02-0.03%。予防的抗菌薬投与とヨウ素系消毒薬で眼内炎は減らせた。

話の後半は眼内レンズのお話。眼内レンズの種類で、保険診療、選定療養、自由診療が有る。保険診療で使われるものには従来型単焦点レンズと明視域拡大レンズがある。外来日帰り3割負担で約54000円。選定療養には、歯科の金合金と同じで多焦点眼内レンズも含まれる。厚生省認可のレンズで保険診療手術費用+選定医療費54000円+多焦点眼内レンズ代(25万~40万円、施設で異なる)自由診療だと、厚生省未認可(個人輸入眼内レンズ)を用いて50万~100万円など。

多焦点眼内レンズとは、近くにも遠くにもピントが合うレンズ。単焦点眼内レンズでは遠方ははっきり見えるが、読書には老眼鏡が必要。ならば、多焦点眼内レンズは天下無双かと言えば、違う。単焦点眼内レンズよりコントラストが劣る。また、グレア、ハロー、スターバーストと表現される光学的不快症状が出やすい。コントラストは使えるエネルギー量に依るから使えるエネルギーは遠方と近方各40%で20%はロスとなる。不快症状はグレア、ハロー(月の笠状のもの)、スターバースト(星状に散乱する光)。コントラスト感度低下をふつうは感じない。夜間運転時の不快症状も訴える。細かいものをくっきり見たい、暗所作業者、視力の質にこだわる人、超高齢者などには多焦点レンズは勧めない。多焦点眼内レンズにはそれぞれの特徴がある。従来型単焦点眼内レンズが今もゴールデンスタンダードである。

保険収載新型眼内レンズ(明視域拡大型眼内レンズ)が有る:別名「なんちゃって多焦点」、遠方から66センチ程度をメガネなしで見られる。代表的なのがレンティスコンフォートだが、上に噴き上げる視界のゴーストを示す。(低加入度数分節型)。アイハンスでは中央に屈折率の違う部分がある。選定療養型眼内レンズにも新型(ビビティー)が登場している。

乱視にはトーリック眼内レンズがあり、保険適用。

モノビジョン:片眼で遠くを、他眼で近くを見させるという方法もある。

ミックス&マッチ:従来型と多焦点を左右別に入れても何故かマッチできる。

詳しくは手術する主治医とよくご相談ください、とのことでした。

視力とコントラスト感度を説明してみよう

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