白内障

[No.3187] 電離層異常検知による大地震発生一時間前予測の可能性(九月学士会午餐会講演要旨など)

清澤のコメント:多くの有力な地震学者が地震の実際的な予知が困難だという中で、演者は電離層に異常を調べることで地震発生の一時間前での大地震の予知が可能であると述べています。京都大学大学院情報学研究科の梅野健教授らの研究グループは、大地震発生直前に観測される電離層の異常を検知し、地震発生の約1時間前に予測する手法「ワンアワー・ビフォアー・システム(OHBシステム)」を開発しました。地球上空の電離層は、地震や太陽活動などの影響を受けやすく、特に大地震の直前には電子数の異常が観測されることが報告されています。梅野教授らは、プレート境界に存在する粘土質内の水が地震前の高温高圧下で超臨界状態となり、電気的特性が急変することで電磁気学的異常が生成されるという物理メカニズムを提案しました。この理論に基づき、全国約1,300か所に設置されたGPS観測局(GEONET)のデータを活用し、複数の観測局から得られる電離層電子数の異常を同時に解析する手法を開発しました。この手法により、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震、2024年の能登半島地震など、マグニチュード7以上の大地震において、発生の約1時間前に電離層の異常を検知し、地震の発生場所や揺れの範囲を予測することに成功しています。

   ーーーー講演要旨ですーーーーー

電離層異常検知による大地震発生一時間前予測の可能性:講演者: 梅野 健(京都大学大学院情報学研究科教授)(令和69月の学士会午餐会の講演要旨、学士会会報970号2025年1月号要旨から抄出しました。)

要旨

大地震には「プレスリップ」や「電離層異常」などの前兆現象があり、これらを検出することで大地震発生の一時間前予測が可能となる可能性がある。その因果関係とメカニズムについて研究が進展している。

主な内容

  • 電離層の役割:
    電離層は地球の状態を反映する「鏡」として機能し、プラズマ状態で電波を反射することで地球の異常を読み取る手段となる。
  • 歴史的観測と技術の進展:
    • 今村明恒が1944年東南海地震で「プレスリップ」を観測していた記録がある。
    • 現代では全球測位衛星システム(GNSS)を用いて、数センチ単位のプレスリップも観測可能。
  • 南海トラフ地震への応用:
    被害総額が数百兆~1200兆円と予測される中、前兆現象を捉えることで予知が可能とされる。
  • 地震予知の4条件:1,大地震直前に現れる。2,平時には現れない。3,リアルタイムで検出可能。4,データが公開可能であること。
    • 電離層異常の具体例と研究の進展:
      • 台湾では地震予知研究が活発。
      • 東日本大震災直前には、電離層の電子数が増加していた。
      • 相関解析法を用いることで、公開データのみから電離層異常を検出可能。
    • 技術の応用とメカニズム:
      • 符号分割多元接続(CDMA)技術を活用してノイズ中から微弱信号を検出。
      • 電離層異常が地震や太陽フレアと連動する仕組みの解明が進行中。
    • 地震予知の未来:
      多数の観測データをリアルタイムで処理することで、短期地震予知の精度が高まる可能性がある。

    結論

    地震予知は現実的な技術として進化しており、特に電離層異常を基軸としたアプローチにより、大地震発生一時間前の予測が視野に入っている。

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