眼瞼痙攣の原因と症状について(患者さま向け解説)
眼瞼痙攣とは?
眼瞼痙攣(がんけんけいれん)とは、自分の意思とは関係なくまぶたの筋肉がピクピクとけいれんを起こしたり、ひどくなると目が自然に閉じてしまったりする状態です。軽い症状では一時的なまばたきの増加が見られますが、重くなると日常生活にも支障をきたします。特に、読書やテレビ視聴、運転などが困難になることが多く、まぶたが頻繁に閉じてしまうため「機能的失明」と呼ばれる状態になることもあります。さらにひどい状態を若倉先生は「眼球使用困難症」と名付けています。
眼瞼痙攣は40歳から60歳頃に発症することが多く、特に女性に多くみられます。直接命に関わる病気ではありませんが、生活の質を大きく損なう可能性があるため、早めの診断と適切な治療が大切です。
眼瞼痙攣の原因
眼瞼痙攣の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、以下のような要因が関係していると考えられています。
① 脳の神経の働きの異常
まぶたの動きをコントロールしている脳の「大脳基底核(だいのうきていかく)」という部分の働きに異常が起き、脳内の神経伝達に異常がおこると、まぶたを開閉する信号がうまく伝わらなくなり、不随意なけいれんが発生します。神経伝達物質(脳内の情報を伝える化学物質)のバランスの乱れもその原因のひとつと考えられています。
② 遺伝の影響
家族内で眼瞼痙攣の患者がいる場合、発症しやすい傾向があることが分かっています。ただし、特定の遺伝子がこの病気の原因であるとはまだ断定されていません。
③ 二次的な要因
眼瞼痙攣が、他の病気や外的な要因によって引き起こされることもあります。
- 目の刺激:ドライアイや目の炎症、まぶしさ(光過敏)が持続すると、まぶたの筋肉が過剰に反応してしまうことがあります。眼瞼痙攣では通常ドライアイの合併も見られます。
- 薬の副作用:一部の精神疾患やてんかん、パーキンソン病の治療薬が、まぶたのけいれんを引き起こすことがあります。まt、それに関連した薬剤が治療に使われる場合もあります。
- 外傷や手術後の影響:顔面や目の周囲を強く打ったり、眼の手術を受けたりした後に、眼瞼痙攣が起こることがあります。神経と血管が異常な形で接触すると両側性の眼瞼痙攣に似た「片側顔面痙攣」が発生することもあります。
- 他の神経疾患との関連:メイジュ症候群(眼瞼痙攣と顔面のけいれんが同時に起こる病気)やパーキンソン病、トゥレット症候群などの病気の一部として、眼瞼痙攣症状がみられることもあります。
眼瞼痙攣の症状
眼瞼痙攣の症状は、初期は軽い違和感から始まり、時間が経つにつれて徐々に悪化することが多いです。主な症状として以下のようなものがあります。
① まぶたのピクピク(不随意なまばたき)
最も特徴的なのは、自分の意思とは無関係にまぶたがピクピク動くことです。最初は疲れたときやストレスがかかったときに軽く感じる程度ですが、次第に頻度が増え、ひどくなるとまぶたが勝手に閉じるという運動症状がみられることがあります。
② まぶしさ(羞明:しゅうめい)
眼瞼痙攣の患者さんの多くが、光に対して異常に敏感になります。これを「羞明(しゅうめい)」といい、強い光だけでなく、パソコンやスマホの画面の光、屋内の照明でも症状が悪化することがあります。感覚過敏は光以外にも広がることがあり舞うs。
③ 目の乾燥や異物感
眼瞼痙攣の患者さんの多くが、ドライアイの症状を伴います。目の乾燥感やゴロゴロする異物感、赤み、ヒリヒリした痛みを感じ、時には眼痛として訴えることもあります。まばたきが多すぎたり、角膜への涙液の塗布が乱れるため、涙液層が不安定になり、ドライアイを引き起こすとも考えられています。
④ まぶたが閉じることで生活に支障が出る
症状が進行すると、まぶたが頻繁に閉じたり、開けにくくなったりします。特に 読書やテレビ視聴、運転中にまぶたが勝手に閉じるため、日常生活に大きな影響 を及ぼします。目を開けようとしても開かない状態が続くと、外出や仕事が困難になり、社会生活に支障をきたすこともあります。開瞼失行と言って眼を開く行為ができないという症状を示す場合もあります。
⑤ ストレスや疲労による悪化
精神的なストレスや疲れがたまると、眼瞼痙攣の症状が悪化することがあります。逆に、リラックスしているときや眠っている間は症状が軽減することが多いです。
⑥ 心理的な影響
まぶたが頻繁にけいれんすることで、周囲の人の視線が気になり、自信を失ったり、外出を避けたりする方もいます。特に症状が重くなると、社会的な孤立感や抑うつ状態につながることもあるため、精神的なケアも大切です。1)目を開いて居られない運動症状と、2)羞明などの感覚過敏症状と並んで、3)気分抑うつを含む精神症状は眼瞼痙攣の3要素とされます。
まとめ
眼瞼痙攣は、自分の意思とは関係なくまぶたがピクピク動いたり、まぶたが閉じてしまったりする病気です。特に まぶしさを感じる、目の乾燥やゴロゴロ感がある、まばたきが増える、まぶたが閉じてしまう などの症状がある場合、眼瞼痙攣の可能性があります。
原因は 脳の神経の異常、遺伝的要因、ドライアイや薬の副作用など さまざまですが、眼瞼へのボトックス注射など早期に適切な診断と治療を受けることで、治療の選択肢が広がり病気のコントロールが可能になります。そのような症状が気になる場合は、神経眼科医師に相談することをおすすめします。
((この内容は最新記事 Blepharospasm: All You Need to Know About the Causes, Symptoms, and Treatment. January 18, 2025も参考にして清澤が原因と診断の項目をまとめました。))
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