NHSイングランドの過去最大の再編と日本の眼科医療のこれから
昨日、旧知の医薬品情報雑誌の編集長が当院を訪問され、今後の日本における近視進行予防治療の展望について意見交換を行う事が出来ました。4月には参天製薬から近視進行予防目的の0.025%アトロピン点眼液が発売される予定ですが、この製剤には一つ大きな話題があります。それは、製造販売承認を受けながらも保険適用外である点です。これにより、薬剤の処方のみならず、効果判定のための検査までもが自由診療として取り扱われることになります。
現時点では、医師が個人輸入し患者様にお渡しするたシンガポール製ミオピン(5ml点眼容器)がその扱いとなっています。0.025%アトロピンユニットドーズ製剤では、薬局での販売用に処方箋を発行する形式が取られるようです。このトピックスについては、『日本の眼科』4月号にも特集記事が掲載予定とのことですが、各医療機関では私費診療用に別カルテを作成し、保険外診療で診療を行う必要があるなど、院内スタッフ全員で自由診療としての対応ルールを共有しておくことが必要です。
さて本日は、編集長から最新号の見本誌『国際医薬品情報』(3月24日号)をいただきました。その中で私が注目した記事は、イギリスの「NHSイングランド」が行う過去最大規模の組織再編に関するものでした。これは、日本の医療制度とも比較しながら考えるべき重要な話題と感じました。
NHSイングランド、組織再編の概要 (NHSイングランド、ストリーティングの再構築に伴い、人員を半減へ |NHSの|ガーディアン紙から:写真はウェス・ストリーティング保健長官)
2025年、イギリスの国民医療制度(NHS)イングランドは、保健長官ウェス・ストリーティング氏の主導により、中央機能の合理化とコスト削減を目的とした大規模な再編を開始します。職員数は13,000人から約6,500人へとほぼ半減され、幹部人事も大幅に刷新される予定です。
この改革では、政府の**保健社会福祉省(DHSC)**との連携が強まり、これまで独立性の高かったNHSの運営に対し、より政治的なコントロールが加えられる構造に変わるとされています。NHS連合のマシュー・テイラー氏は、これを「過去10年で最大の再構築」と評しています。
日本の医療制度との違い
日本では、国民皆保険制度により、患者は自ら医療機関を選択し、眼科を含む専門医に直接アクセスすることが可能です。これに対しイギリスでは、まずGP(家庭医)を受診し、必要に応じて専門医への紹介を受ける「紹介制」が一般的です。このシステムにより、眼科診療を含む専門医療へのアクセスが遅れることが多いと報告されています。
さらに日本では、自由診療や民間医療機関の多様性があるため、患者の希望に沿った迅速な対応が可能ですが、NHSは公的医療サービスが中心で、長期の待機期間が生じやすい構造になっています。
眼科診療への影響は?
再編によって、中央機構の縮小が進む一方で、地域現場の裁量が増す可能性があります。しかしその一方で、制度変更による混乱や、サービス提供の遅れも懸念されます。特に、白内障、緑内障、加齢黄斑変性など高齢化社会で需要が高まる眼科医療にとって、この影響は看過できません。
実際にイギリスでは、白内障手術の待機期間が数ヶ月から1年以上に及ぶことがあり、進行する視力障害への対応が間に合わないケースもあるようです。一方、日本では、患者のニーズに応じて比較的速やかに手術や加療が行える体制が整っており、これは国民皆保険と民間医療機関の両立による利点といえるでしょう。
今後、こうした海外の医療制度改革が日本の制度にどのような影響を及ぼすのか注視しながら、私たち眼科医も自由診療と保険診療のバランスや、診療体制の柔軟性を保つ工夫が求められる時代に入ったと感じています。
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