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[No.3707] 革命記念日(7月14日)に寄せて ― フランスがもっと好きになる日

革命記念日に寄せて ― フランスがもっと好きになる日

7月14日はフランスの革命記念日(Fête nationale française)、通称「カトーズ・ジュイエ(14 juillet)」。1789年のこの日、パリ市民がバスティーユ牢獄を襲撃し、絶対王政に揺さぶりをかけたフランス革命の幕が切って落とされました。フランスにとって、自由・平等・友愛という共和国の理念の原点ともいえる象徴的な日です。

この記念日には、パリのシャンゼリゼ通りで華やかな軍事パレードが催されます。共和国の誇りと国防の姿勢を示すこの行事では、外人部隊の工兵隊がひときわ注目を集めます。革の前掛けに斧を携えて行進する彼らの姿は、厳粛でありながらもどこかロマンチックで、テレビ中継を通じて多くの国民がその姿を見守ります。

空を見上げれば、青・白・赤の三色の煙を引きながら戦闘機が編隊飛行し、共和国の理念を空に描きます。テレビの前では家族がパンやチーズを片手にワインを楽しみながら、「やっぱり共和国っていいよね」と微笑み合う——そんなひとときもまた、フランスらしい情景です。

この時期のフランスを語るうえで欠かせないのが「バカンス」です。フランス人の夏のバカンスは7月中旬から8月いっぱいまで。5週間以上の休暇をとる人も多く、都市部の多くの飲食店やブーランジュリーは長期休業に入ります。人気の星マーク付きレストランも「バカンスにつき休業中」の張り紙が並び、大ホテルのレストランだけが営業を続けているのが夏のパリの風物詩です。

それでも、夏のパリの魅力は色あせません。セーヌ川のほとりで読書にふける人々、モンマルトルの丘の上から街を見渡す恋人たち、夜のセーヌを走るクルーズ船から眺めるエッフェル塔の煌めき……。少し不便でも、それが旅の記憶に味わいを添えてくれるのです。

フランス人にとってバカンスは、単なる長期休暇ではありません。「生きるために休む」という哲学の実践です。5月頃になると、「今年はどこへ行こうか?」という会話がランチタイムに飛び交います。「東欧へ自家用車で旅するつもりだよ」「海外領土のグアドループかマルチニーク(カリブ海、西インド諸島)に行ってみたいな」など、楽しみにしている様子が伝わってきます。

私たち日本人も、こうした「仕事と休暇の調和」の精神に学ぶところがあるのではないでしょうか。効率や成果にばかり目を向けず、「どう休むか」もまた人生の豊かさを測る尺度になる。そんな考え方が、働き方や生き方を見直すヒントになるかもしれません。

私自身、1987年にフランス原子力委員会(CEA)の生物学部門に留学した経験があり、今年はその縁で、広尾のフランス大使館で行われた留学経験者(アンシャンブルシエ)のパーティーに招かれました。美しい建物、洗練された料理、そして何より「フランスに育ててもらったようだ」と感じさせる温かい言葉の数々に、静かな誇りと感謝を覚えました。この会も、革命記念日を意識して開催されたものでした。

フランスには、美術、音楽、建築、文学、哲学——知的好奇心を刺激するあらゆる魅力が詰まっています。クロックムッシュとエスプレッソの香る朝、マルシェで交わされる気さくな会話、「ボンジュール」と微笑みかける見知らぬ人々。そうした日常の断片にこそ、フランスの美しさがあります。

7月14日、革命記念日。この機会に、あなたも少しだけフランスに想いを寄せてみませんか?フランス映画を観るのもいい、本を読むのもいい、旅の計画を立てるのも素敵です。フランスの魅力は、きっといつでもあなたのすぐそばにあるのです。

注:

今年のパレード概要(パリ)

  • 実施場所:前年のオリンピック開催による変更を終え、再びシャンゼリゼ通りで開催されますcervens.net+2secretsofparis.com+2en.wikipedia.org+2

  • 日時:7月14日10:00〜12:00にかけて、エトワール凱旋門(シャルル・ド・ゴール広場)からコンコルド広場まで行進

  • 開始式:凱旋門前で国家元首(大統領)と軍最高司令官による点検・閲兵式が行われますen.wikipedia.org

  • 構成

    • 地上部隊(歩兵・騎兵・装甲車両など)、

    • 約200頭の騎馬および155台の軍用車両、80台のバイクを含む約250台の車輌、

    • 航空部隊(約63機の飛行機・ヘリ、パトルイユ・ド・フランスの9機編隊によるアクロバット飛行)

  • 参加規模:地上部隊は6,000人以上が行進し、約240頭の馬と大規模編隊が参加

  • 外国部隊の参加:招待された外国軍部隊の参加も含まれるケースがあり、2025年はインドネシアがゲスト国に指定されており、インドネシア大統領プラボウォ・スビアント氏の出席およびインドネシア軍の参加が予定されています

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