現役世代の負担を減らすには?社会保険・税制改革を巡る議論から見える将来の日本
7月20日の参議院選挙を前に、「現役世代の手取りをどう守るか」が注目のテーマとなっています。今回は、美容外科医であり投資家としても発信を続ける高須幹弥先生と、会計士YouTuberとしても人気の山田真哉さんが、金融所得課税や社会保険制度、消費税の減税案などをテーマに、今後の医療や経済の在り方について議論を交わしました。
社会保険制度の構造的な歪み
現在、会社員の給料の約3割が社会保険料として差し引かれています。その一方、高齢者の保険料負担は低く、実際に医療や介護サービスを受ける比率は高いという不均衡が存在します。75歳以上の高齢者医療の多くは、国庫負担(税金)や現役世代の保険料でまかなわれており、「現役世代の負担が重すぎる」との指摘が広がっています。
また、高齢者の約3割は2000万円以上の金融資産を保有しており、株式配当などの「金融所得」にも保険料を課すべきではないかという議論が政府内で進んでいます。ただし、証券口座の情報に基づいた課税となるため、「現金を持つ人」より「投資をしている人」だけが負担を強いられる構図となり、偏った制度設計との批判もあります。
金融所得課税の強化は進むのか?
金融所得(株の売却益や配当金)への課税強化も争点です。現在は約20%の税率で分離課税されていますが、野党の一部はこの税率を30%まで引き上げようという案を掲げています。これに対して、投資家の間では「リスクをとっているのに不公平」との声が強く、特に中長期で資産形成を進める現役世代からの反発が予想されます。
2025年からは、金融所得が10億円以上のごく一部の富裕層を対象とした「ミニマムタックス」も導入されました。今後この対象ラインが5億円、1億円、あるいは2000万円と徐々に下がってくるのではという不安もあり、「新NISA(1800万円非課税)」を活用して資産形成してきた世帯にも影響が出る可能性があると懸念されています。
医療費の削減は実現可能か?
日本維新の会は「医療費を年4兆円削減し、現役世代の社会保険料を年6万円下げる」と公約しています。高須先生は、風邪や花粉症、軽度の腰痛など、本来なら市販薬で対応可能な症状で病院受診する例が多く、無駄な医療費の見直しは必要だと指摘します。一方で、医療費削減により赤字経営の病院がさらに厳しくなる恐れもあり、「医師や看護師を公務員化するなど大胆な制度改革が必要」との意見も出ています。
消費税減税とトランプ関税の関係
消費税を下げるという案も複数の党から出されています。生活必需品の税率を0%にする案と、消費税全体を5%に下げる案に分かれます。経済活性化を目指すなら後者の方が効果的という見方もありますが、低所得層支援の観点では前者が望ましいとも言われています。
特に注目されるのが、アメリカが消費税(VAT)を導入していないという国際的な構造の中で、トランプ関税との関係。消費税は輸出に対しては免税、輸入に対しては課税されるため、輸出国に有利。これに反発する米国は関税で対抗しており、日本が消費税を下げれば関税交渉に有利になる可能性も。ただし、ヨーロッパとのバランスが崩れるなど複雑な影響も予想されます。
投資家・現役世代に求められる視点
今回の議論を通じて明らかになったのは、「改革には痛みが伴う」という現実です。現役世代の手取りを増やすためには、社会保険や医療、税制など多くの分野での構造改革が必要ですが、それは一部の高齢者や富裕層の負担増を意味するため、政治的には困難な面もあります。
また、選挙のたびに変わる政党の公約が実現するのかどうか、過去の事例(例:村山内閣による180度方針転換)を見ても「公約=実行」ではないことも理解しておく必要があります。
おわりに:未来の医療と経済をどう選ぶか
現状維持か、構造改革か。今回の選挙では、制度の維持か破壊的変化かの二択が問われているという見方もあります。医療制度の持続性、若い世代の生活保障、そして投資を通じた経済活性化。そのいずれにも「賢い負担と支え合い」が求められています。私も高須医師の考えに近く、医療機関の収支が合わないからと言って、保険からの医療費支出増多を求める時代はもう過ぎたと思います。眼科診療に携わる私たちも、医療提供者として、そして一市民として、今後の制度の方向性に注目し、地域や患者とともに考えていく必要があるでしょう。
※出典:YouTubeチャンネル「楽待ち」特別企画対談より再構成。高須幹弥先生、山田真哉氏発言をもとに構成。https://youtu.be/O8Td4pseBbQ?si=Ovj8p52-qIeDYnmt
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