中高年の方に多い「飛蚊症」―どんな病気が隠れているのか?
設問
「中等度の近視がある中高年の男女で、最近『飛蚊症(目の前に虫や糸くずが飛んでいるように見える)』を感じます。これは危険な病気でしょうか?どんな検査や病気の可能性が考えられるのか、そして治療は必要なのでしょうか?」
答え
飛蚊症は多くの場合、加齢に伴う生理的な変化(硝子体の濁りや後部硝子体剥離)が原因ですが、時に重大な眼底疾患の前触れであることもあります。そのため眼科では必ず散瞳検査を行い、眼底を丁寧に調べる必要があります。ここでは考えられる代表的な病気とその対応について説明します。
1. 後部硝子体剥離(PVD)
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症状:突然の飛蚊症や光視症(ピカッと光が走る)が出現する。
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診断:散瞳して眼底検査を行い、硝子体の後部が網膜から剥がれている所見を確認します。
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治療方針:多くは自然経過で落ち着きます。治療は不要ですが、網膜裂孔の合併がないかを必ず確認し、必要に応じて経過観察を行います。
2. 網膜裂孔・網膜剥離
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症状:飛蚊症に加え、視野の一部が暗く欠ける、カーテンがかかるように見える。
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診断:散瞳眼底検査で裂孔や剥離の有無を確認します。OCTや超音波検査を用いる場合もあります。
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治療方針:裂孔のみならレーザー光凝固術で予防的に処置可能。すでに網膜剥離が進行していれば手術(硝子体手術や強膜バックリング術)が必要です。早期対応で視力予後が大きく変わります。
3. 硝子体出血
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症状:飛蚊症が急に強くなり、黒い影が視野全体に広がる。
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原因疾患:網膜裂孔、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、高血圧性網膜症など。
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診断:眼底が出血で見えない場合は眼球超音波検査で網膜剥離の有無を調べます。
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治療方針:出血の原因を特定し、止血・レーザー治療、必要に応じ硝子体手術を行います。
4. ぶどう膜炎(眼内炎症)
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症状:飛蚊症に加え、かすみ、視力低下、充血、眼痛。
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診断:眼底に炎症性沈着物(細胞や混濁)を確認。血液検査や全身疾患の評価も行う。
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治療方針:ステロイド点眼や内服、全身治療。感染性であれば抗菌薬・抗ウイルス薬が必要。
5. 眼底出血(糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症など)
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症状:飛蚊症に伴って視力が急に下がることもある。
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診断:散瞳眼底検査や蛍光眼底造影。
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治療方針:基礎疾患の管理、網膜レーザー光凝固、抗VEGF薬の硝子体内注射など。
眼科での流れ
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問診:飛蚊症の出現時期、光視症の有無、視野異常がないかを確認。
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検査:視力・眼圧測定、散瞳眼底検査、OCT、超音波。
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鑑別:上記のような疾患の有無を調べます。
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説明:異常がなければ多くは心配不要ですが、裂孔や出血は進行性なので注意が必要です。
再検査の重要性
飛蚊症の初期には網膜裂孔が見えにくい場合もあります。そのため 1か月後の再検査を推奨 しています。症状が増悪する場合(飛蚊の急増、光視症の悪化、視野の欠け)があれば、予定を待たずに直ちに受診してください。
まとめ
飛蚊症は「加齢による自然な現象」で済むこともあれば、「視力を失う重大疾患の初期サイン」であることもあります。中高年で近視がある方は特に網膜裂孔・網膜剥離のリスクが高いため、眼科での散瞳検査が欠かせません。初診で異常がなくても、1か月後に再度確認することが安心につながります。
👁️🗨️ 院長からの一言
飛蚊症を感じたときは「年のせい」と思わず、ぜひ早めに眼科での精査を受けてください。早期発見と適切な治療で多くの目は守ることができます。
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