中年の光視症をどう考えるか
中年期に入ってから「キラキラした光が見える」「目の端で稲妻のような光が走る」などの症状(光視症)が出た場合、多くは生理的な変化に伴うものですが、中には重大な眼疾患の初期サインであることもあります。今回は、光視症で考えるべき代表的な病気と鑑別について、患者さん向けに分かりやすく解説します。
① 光視症とは?
光視症は、網膜や硝子体に機械的な刺激が加わることで、実際には光がないのに光を感じる現象です。多くの方が「暗いところで稲妻が走った」「視野の端でピカッと光った」と表現されます。
② よくある原因
中年以降の光視症で最も一般的なのは 後部硝子体剥離(PVD) です。
-
硝子体は目の中のゼリー状の組織で、年齢とともに液化し網膜から離れていきます。
-
この際、網膜を引っ張ることで光が走るように感じます。
-
多くの場合は自然な加齢現象で、心配はいりません。
③ 注意すべき疾患
光視症が出たときに、必ず鑑別しておくべき疾患があります。
-
網膜裂孔・網膜剥離
-
網膜が実際に破れている場合、光視症と同時に「飛蚊症(黒い点が急に増える)」「カーテンがかかるような視野欠損」が現れることがあります。
-
放置すると失明につながるため、早急な眼底検査が必要です。
-
-
網膜前膜や黄斑円孔の前駆症状
-
硝子体の牽引が黄斑部に及ぶと、歪んで見える、中心に影が出るといった症状を伴うことがあります。
-
-
ぶどう膜炎
-
光視症とともにかすみ、痛み、充血を伴う場合は炎症が疑われます。
-
自己免疫疾患や感染症に関連することがあります。
-
-
片頭痛の前兆(閃輝暗点)
-
ジグザグした光の波が10〜20分持続し、その後に頭痛が起こるタイプです。
-
網膜や硝子体ではなく、脳の視覚野の血流変化が原因です。
-
④ 鑑別のポイント
-
片眼か両眼か
-
片眼のみなら網膜性、両眼同時なら片頭痛など中枢性を考えます。
-
-
持続時間
-
一瞬の稲妻なら網膜牽引、数分続く場合は閃輝暗点の可能性。
-
-
随伴症状
-
飛蚊症や視野の影 → 網膜裂孔の可能性
-
頭痛を伴う → 片頭痛
-
充血・痛み → 炎症
-
⑤ 受診の目安
次のような場合は、早めに眼科を受診してください。
-
光視症が急に始まった
-
飛蚊症が急に増えた
-
視野の一部が暗く欠ける
-
視力が急に低下した
これらは網膜裂孔や剥離の可能性があり、放置すると失明に至ることもあります。
まとめ
中年の光視症は、単なる加齢による硝子体の変化であることが多いのですが、網膜剥離や裂孔などの重い病気の初期サインでもあります。自己判断せず、まず眼底検査を受けることが大切です。特に片眼で突然起こった場合や飛蚊症が急に増えたときは、緊急性が高いと考えてください。
👁 清澤のコメント
光視症は「年齢とともに出ることもあるが、放置は危険なサインかもしれない」という、患者さんにとって判断が難しい症状です。眼科では散瞳して眼底をくまなく調べることで、裂孔や剥離を早期に見つけられます。症状が軽くても一度は専門医にご相談いただくのが安心です。
コメント