白内障

[No.240] 遺伝性DNA修復障害における眼症状とは?:ウェルナー症候群と緑内障の関連は?

清澤のコメント:最新の日本眼科学会誌に「緑内障を合併したWerner症候群の2例」岡田咲華ほか:が掲載されていた。Werner症候群と言えば、早老症で有名であり、若年性に白内障を起こすことも知られている。また私たち長いこと眼科医をしてきた世代にとっては白内障術後に内皮減少で水泡性角膜炎を起こしやすいという思いもあった。それにしてもなぜ緑内障が起きやすいのだろうという疑問が沸く。
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まず先の論文の要旨を採録する;
背 景:Werner症候群は思春期以降に発症し,白髪や禿頭といった毛髪変化・皮膚の萎縮や硬化などの老化徴候が早期に生じる早老症の代表的な疾患である.合併症として両眼白内障がよく知られているが,網膜変化の報告はほとんどない.今回,光干渉断層計(OCT)で乳頭周囲網膜神経線維層(cpRNFL)厚と網膜神経節細胞複合体(GCC)厚の菲薄化を認め,Humphrey視野検査で緑内障と診断したWerner症候群の2例を経験したので報告する.
症例①:44歳男性.初診時矯正視力は左右ともに1.2であり,前眼部は両眼が眼内レンズ挿入眼,眼底所見として両眼の視神経乳頭陥凹拡大がみられた.cpRNFL厚,GCC厚の下方の菲薄化を認めた.Humphrey視野検査で左眼は弓状暗点を示し,緑内障を認めた.
症例②:62歳女性.初診時矯正視力は右1.0,左0.5であり,前眼部は両眼が眼内レンズ挿入眼,眼底所見として両眼に視神経乳頭陥凹拡大がみられた.cpRNFL厚,GCC厚の菲薄化を認めた.Humphrey視野検査で右眼は上方優位に視野欠損を示し,緑内障を認めた.
結 論:Werner症候群に緑内障を合併した2例を報告した.原因不明の若年白内障を認めWerner症候群を疑う際には,前眼部検査による若年白内障の確認だけではなく,緑内障の合併をOCTや視野検査で確認していく必要があると考えられる.(日眼会誌126:36-42,2022)という事であった。
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別の症例報告では、ウェルナー症候群の発生率は、日本では2万〜4万人に1人、米国では20万人に1人だそうである。その症例では、鳥のような顔、萎縮性皮膚、強皮症のような皮膚、および若年性白内障を含む、早期老化に似たウェルナー症候群の特徴を示したとしていた。ウェルナー症候群の確定診断は、WRN遺伝子の変異の遺伝子解析に基づいていた。WRNは、両方のヘリカーゼとのRecQファミリーのメンバーであり、活動をエキソヌクレアーゼ、それはDNA修復を含むいくつかの細胞の代謝経路に関与し、そしてテロメア維持にも関与する。この遺伝病の遺伝的パターンは常染色体劣性であり、WRNのホモ接合変異が検出されるという。
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多くのwerner症候群を集めてその眼症状を記載した論文は見つけきれなかったが、
Ocular Manifestations in the Inherited DNA Repair Disordersという論文があった。

概要は;

デオキシリボ核酸(DNA)修復は、ゲノムDNAの完全性を維持するために設計された基本的なプロセスであり、内因性または環境によって誘発される変化によって継続的に挑戦される。DNA修復に関与する多数の遺伝子がクローン化されており、塩基除去修復、ヌクレオチド除去修復、ミスマッチ修復、DNA組換えなどのさまざまなDNA修復経路に関与している。DNA修復遺伝子の突然変異による遺伝性疾患には、主に色素性乾皮症、コケイン症候群、硫黄欠乏性毛髪症、ブルーム症候群、ロスムンド・トムソン症候群、ウェルナー症候群などがある。これらの症候群では、軽度から重度の眼症状が発生する。例えば、色素性乾皮症の眼瞼皮膚がんとコケイン症候群の網膜ジストロフィーは、これらの症候群の主な特徴である。このレビューは、DNA修復経路、関連する症候群の一般的および眼の特徴、診断に役立つ臨床検査、およびDNA修復に関連する一般的なプロセス(紫外線感受性、発癌、アポトーシス、酸化ストレス、および早期老化)に焦点を当てた。;とのことだった。
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という訳で、Werner症候群がなぜ緑内障の発生と関連するのかという当初の疑問は解消できなかったが、多少考察の網を広げることで、Werner症候群がDNA修復の障害を持った疾患のひとつであるということまでは確認ができた。:本日はここまで。

 

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