白内障

[No.4200] トプコン社「マルチファンクショントポグラフィー」MYAHの紹介を伺いました。

トプコン社「マルチファンクショントポグラフィー」

―近視進行を“見える化”する多機能検査機器とは?―

小中学生で近視が増えているいま、眼科診療では「近視進行をどれだけ早く、正確につかむか」がとても大切になっています。その際に、近視の進み具合を客観的に示す指標として“眼軸長(がんじくちょう)”が注目されています。眼軸長とは目の奥行きの長さのことで、近視はこの眼軸が伸びていくことで進行すると言われています。

最近、この眼軸長を含む複数の項目を1台で測定できる装置として、トプコン社が公開している 「マルチファンクショントポグラフィー(Multi-functional Topography)」 に関心が高まっています。

当院ではまだ導入しておりませんが、患者さんに向けてその特徴を紹介いたします。


■ 多機能が大きな魅力の装置

“マルチファンクション”という名の通り、この装置は以下のような複数の検査をまとめて行うことができます。

● ① 角膜の形を調べる(角膜トポグラフィー)

カラーマップで角膜のカーブを可視化し、乱視のタイプやわずかなゆがみまで分かります。円錐角膜などの疾患の早期発見にも用いられる技術です。

● ② 前眼部の情報を詳細に測定

角膜厚、前房深度など、白内障手術の術前評価にも役立つ項目が1度に測れます。

● ③ 眼軸長が測定できる

この機器が特に評価されている理由が、眼軸長を直接測定できる 点です。

近視治療(低濃度アトロピン、オルソケラトロジー、近視抑制眼鏡など)の効果判定は、視力や度数よりも 眼軸長の変化を見るほうが正確 だと世界的に考えられています。

そのため、子どもの近視管理には大変頼りになる指標となります。


■ 近視進行の「見える化」に役立つ理由

眼軸長は

  • 半年でどれくらい伸びたか

  • 同年代の平均と比べて早いかどうか

  • どの治療が効いているか

    を判断しやすく、とても実用性があります。

例えば、視力は日によって変動しますし、屈折度数も調節力の影響を受けます。しかし眼軸長は非常に安定した指標で、近視の“本当の進み具合”を教えてくれます。

そのため、近視が早く進むお子さん(ハイリスク群)の早期発見に威力を発揮します。


■ 当院が現在導入していない理由

トプコンのこの装置は、多機能でありながら価格が比較的手頃で、眼軸長を正確に測れる点は大きな魅力です。

しかし現状では、白内障手術直前に眼内レンズ度数決定目的での測定以外には眼軸長の測定そのものに保険点数が設定されていない ため、

どの眼科でも自由に導入できるわけではありません。

角膜形状解析など既存の項目には保険が適用されますが、

肝心の「眼軸長測定」が近視進行予防目的では保険収載されていないことは、

近視予防を真剣に進めていきたい医療機関にとって大きな課題です。

当院としても眼軸長を直接測定できることは魅力的であり、導入を検討したい気持ちは強いのですが、保険診療との整合性が現状では十分でないという点が最大の障害になっています。


■ まとめ

近視が増える時代において、眼軸長を含む“目の成長”を正確に把握することはとても重要です。

トプコン社マルチファンクショントポグラフィーは、

1台で多くの情報を得られる優れた装置であり、

近視管理にも大きな可能性を持っています。

今後、眼軸長測定が保険収載され、

より多くの子どもたちに専門的な近視管理が受けられる環境が整うことを願っています。

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