白内障

[No.4226] 百日草と目の健康の小さな話

―高円寺の路傍で見つけた黄色いジニアから

百日草と目の健康の小さな話

高円寺の路傍で、黄色の可愛らしい花が咲いているのを見つけました。鉢からすくっと伸びた茎の先に、素朴で鮮やかな花をつけているその姿は、晩秋の空気の中にあっても元気そのもの。調べてみると、これは「百日草(ジニア)」、特に細い葉とコンパクトな草姿が特徴のジニア・リネアリス系の品種のようです。百日草という名の通り、長い期間咲き続ける丈夫な花として親しまれています。

百日草は暑さや乾燥に強く、夏から秋にかけて街角や庭先でよく見かけます。黄色、白、オレンジなど色とりどりの品種があり、園芸初心者でも育てやすい花です。今回見かけた黄色い花は、中心部が濃いオレンジ色で、周囲の緑にもよく映え、歩いている人の気持ちをそっと明るくしてくれるような雰囲気を持っていました。

こうした花を眺める時間には、実は目の健康にも優しい効果があります。外来では、デスクワークやスマートフォンで目が疲れやすくなっている方に「近くを見続けた後は、遠くや自然を眺めてください」とお話しすることがあります。これは、近くを見るときに緊張する毛様体筋という眼の筋肉が、遠くを見ることでゆっくりと緩むためです。百日草のような自然の色彩を見ると、緊張していた焦点の切り替えがふっと楽になり、眼精疲労の軽減につながります。

また、花の中心を見るという行為は、私たちが物を見るときにもっとも鋭い視力をもつ黄斑(中心窩)を自然に使います。黄斑は加齢黄斑変性など重要な疾患が起きる場所でもありますが、健康なうちから「中心視野をしっかり使う」という行動は、目のはたらきを意識する機会にもなります。特に黄色い花は光の反射が穏やかで、色覚にも心地よい刺激を与えてくれるのが特徴です。

百日草を見ながらゆっくり散歩することも、目の健康を考えるうえでとても良い習慣です。緑内障の進行を抑えるためには、適度な運動やストレスの軽減が推奨されています。散歩をして呼吸が整い、自然に触れると自律神経も安定し、結果として全身の血流改善にも寄与します。これは、目だけでなく心の健康にも大切な「余白の時間」と言えるでしょう。

百日草のような身近な花に目を向けると、忙しく過ぎていく日常の中でも、ほんの数十秒であっても視覚がリセットされるような感覚があります。夕方の外来では、「暗くなると見えにくくて不安になる」という患者さんも増えてきますが、屋外で自然光を浴びる時間が少しでもあると、目の順応機能も保たれやすくなります。花を見に小さく寄り道するだけでも、視覚の健康を守るひとつの行動になります。

自宅のある高円寺の街では、季節ごとに小さな花たちが静かに咲き、私たちに色彩の豊かさを教えてくれます。今日見かけた百日草も、その一つでした。みなさんも、通勤途中や散歩の折に、ぜひ足元の花々に目を向けてみてください。ほんの少し立ち止まるだけで、目にも心にも深呼吸のような効果が感じられるかもしれません。

目の健康は日々のささやかな習慣から。自然を眺める時間は、そのための大切な贈り物のように思えます。

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