白内障

[No.4412] 高齢者に見られやすい結膜弛緩症の診断と治療について

加齢とともに「目にゴロゴロする感じがする」「目に何か入っているようで気になる」「涙があふれる」といった訴えで受診される患者さんの中に、結膜弛緩症と呼ばれる状態が見つかることがあります。これは、白目を覆っている結膜が年齢変化などによってゆるみ、特に下まぶたの内側で、正常であれば存在するはずの涙のたまり(下方涙液メニスカス)の位置に、波打つように余った結膜が入り込んでしまう状態です。その結果、涙の流れが妨げられたり、瞬きのたびに結膜がこすれたりして、不快な症状が生じます。

結膜弛緩症は高齢の方に多くみられますが、すべての方が手術の対象になるわけではありません。まずは点眼治療が基本となります。人工涙液や抗炎症点眼などで症状が軽くなる場合も少なくありません。しかし、次のような条件がそろう場合には、外眼部手術を専門とする眼形成の医師に紹介し、結膜弛緩切除術を検討することがあります。

第一に、異物感や痛み、流涙などの症状が強く、日常生活に支障が出ている場合です。第二に、点眼治療を十分に行っても症状の改善が乏しい、あるいは一時的にしか良くならない場合です。第三に、診察で明らかに下方の結膜が大きくたるみ、涙液メニスカスを物理的に塞いでいることが確認できる場合です。さらに、ドライアイや眼瞼炎の治療を行ってもなお症状が残る場合には、結膜弛緩そのものが主な原因と判断され、手術が現実的な選択肢となります。

結膜弛緩切除術は、患者さんにとって比較的負担の少ない外来手術です。局所麻酔の点眼や注射を行ったうえで、余分にたるんだ結膜を下まぶた側を中心に少量切除します。その後、必要に応じて細い糸で縫合し、結膜を適切な位置に整えます。手術時間は通常20〜30分程度で、入院は不要です。術後は数日から1週間ほど、抗菌薬や抗炎症薬の点眼を行い、経過をみます。縫合糸は自然に取れる場合もありますし、後日外来で抜糸することもあります。

この手術の目的は、見た目を整えることではなく、涙の流れと目の表面環境を正常に近づけ、異物感や流涙といった不快な症状を軽減することにあります。多くの方で、術後に「目がすっきりした」「ゴロゴロ感が減った」といった改善が期待できますが、加齢変化が背景にあるため、将来的に別の部位にたるみが出てくる可能性がゼロではないことも理解しておく必要があります。

結膜弛緩症は、年齢のせいだから仕方がないと我慢されがちですが、適切な治療で楽になることの多い病気です。点眼で十分な場合もあれば、専門医による外眼部手術が有効な場合もあります。症状が続くときには、遠慮せず眼科医に相談し、ご自身に合った治療法を一緒に考えていくことが大切です。

日経メディカルに私の書いた古い記事:

眼の結膜が弛む「結膜弛緩症」

メルマガ登録
 

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

最近の記事

  1. 「ダイエット」より「ゼロシュガー」──言葉の変化が映す若者の健康観

  2. ビジュアルスノー症候群の人は映像の中に「顔が見えやすい」のか ― 顔のパレイドリア錯覚から分かる脳の過敏さ ―

  3. ビジュアルスノウ症候群とパレイドリアという「見え方のクセ」 — 雑然としたものの中に意味を見出しやすい視覚の特徴 —