小児の眼科疾患

[No.4632] 近視進行抑制治療の最前線:オルソケラトロジーとアトロピン濃度の違いはどこまで重要か

近視進行抑制治療の最前線:オルソケラトロジーとアトロピン濃度の違いはどこまで重要か

近年、小児の近視進行を抑える治療として、オルソケラトロジーや低濃度アトロピン点眼が広く用いられるようになっています。しかし、アトロピンの濃度の違いによる効果の差や、オルソケラトロジーとの直接比較については、とくに学童後期から思春期にかけての年齢層では十分なデータがありませんでした。今回紹介する研究は、そうした疑問に答えるために行われた重要な臨床試験です。

本研究は、8歳から15歳の近視児209名を対象に、2年間にわたって3つの治療法を比較した多施設ランダム化試験です。対象となったのは、−1.0Dから−4.0D程度の比較的軽度から中等度の近視の子どもたちで、0.01%アトロピン点眼、0.04%アトロピン点眼、そして夜間装用のオルソケラトロジーの3群に分けて治療効果が検討されました。評価の中心となったのは、近視進行の最も客観的な指標とされる眼軸長の変化です。

その結果、最も強い近視進行抑制効果を示したのは0.04%アトロピンでした。0.01%アトロピンと比較して、2年間での眼軸長の伸びが有意に少なく、より高い効果が確認されました。一方で、0.01%アトロピンとオルソケラトロジーの間には差はあるものの、その差は比較的小さく、臨床的にはほぼ同等と考えられる結果でした。つまり、効果の強さとしては「0.04%アトロピンが最も強く、オルソケラトロジーと0.01%アトロピンがそれに続く」という構図が明らかになったといえます。

さらに興味深い点として、年齢が高いほど近視の進行は遅くなる傾向があり、また初期の近視がやや強い子どもでは、オルソケラトロジーによる抑制効果が相対的に良好である可能性も示されました。これは治療選択を個別化する上で重要な知見です。

安全性については、いずれの治療も大きな問題はありませんでしたが、注意すべき違いも見られました。0.04%アトロピンでは光過敏の発生率が約23%と高く、0.01%の約2%と比べて明らかに増加していました。一方、オルソケラトロジーでは約4人に1人に軽度の角膜上皮障害(蛍光染色)が見られましたが、重篤な合併症は報告されていません。したがって、いずれの治療も概ね安全ではあるものの、それぞれ特有の副作用には注意が必要です。

以上の結果から、この研究は「より強い効果を求めるなら0.04%アトロピンが有力であるが、副作用とのバランスを考える必要がある」という臨床的に非常に現実的な結論を示しています。また、0.01%アトロピンやオルソケラトロジーも一定の効果を持ち、患者の年齢、生活スタイル、希望に応じて選択されるべき治療法であることが確認されました。

原著は、Xu HらによるJAMA Ophthalmology2025年掲載のランダム化臨床試験(doi:10.1001/jamaophthalmol.2025.2321)です。

清澤のコメントとしては、この研究は近視進行抑制治療の「強さと安全性のバランス」を改めて示した重要な報告と考えます。実臨床では一つの治療法がすべての患者に適するわけではなく、個々の症例に応じた選択が不可欠です。私自身は、現在、参天製薬のリジュセアミニ0.025%アトロピン点眼とオルソケラトロジーを併用を中心に臨床で使用していますが、本研究の結果は、より高濃度アトロピンの適応をどのように考えるかという点で今後の診療に示唆を与えるものと感じています。

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