夏に注意したい目の感染症:流行性角結膜炎と咽頭結膜熱
夏が近づくと、子どもたちのプール遊びが盛んになります。それに伴い、目の感染症、とくに「流行性角結膜炎(はやり目)」と「咽頭結膜熱(プール熱)」の患者さんが増えてきます。どちらも「アデノウイルス」というウイルスによって引き起こされる感染症で、子どもから大人まで感染の可能性があり、流行することもあるため注意が必要です。今回は、この2つの感染症について、症状や診療の流れ、日常生活での注意点などをわかりやすくご紹介します。
1.流行性角結膜炎(はやり目)
主な症状
- 白目の充血
- 目の痛み・かゆみ
- 涙や眼脂(めやに)が多くなる
- まぶたの腫れ
- 片目から始まり、数日で両目に広がることが多い
潜伏期間
- 通常5~7日(接触してから症状が出るまでの期間)
原因ウイルス
- 主にアデノウイルス8型、19型、37型など
好発年齢
- 幼児から成人まで幅広く見られますが、特に学校や職場での集団感染が起きやすいのが特徴です。
診断と注意点
- 眼脂を用いた迅速抗原検査(アデノウイルスキット)で診断が可能です。
- 感染力が非常に強いため、診察時にはスタッフも手袋やゴーグルを着用して対応します。
- 職場や学校、保育園・幼稚園などには登校・登園停止の指導がされることがあります(医師の診断により解除されます)。
治療と処方
- ウイルス感染なので特効薬はありません。
- 症状を和らげるために、抗炎症の点眼薬(フルメトロンやプラノプロフェンなど)や、細菌の二次感染を防ぐ抗菌薬点眼が処方されることがあります。
- 強い炎症で角膜(黒目)に濁りが出た場合は、ステロイド点眼薬を使用することもあります。
その後の診療計画
- 通常は1~2週間ほどで自然軽快しますが、角膜に濁りが残ると視力に影響を及ぼすこともあるため、定期的な診察が必要です。
- 完全に治るまでには数週間かかることがあります。
2.咽頭結膜熱(プール熱)
主な症状
- 発熱(38~39度)
- 咽頭痛(のどの痛み)
- 結膜炎症状(充血、涙、眼脂)
- 倦怠感や食欲不振
潜伏期間
- 通常5~7日
原因ウイルス
- 主にアデノウイルス3型、4型、7型など
好発年齢
- 特に幼児~小学生に多くみられますが、大人にも感染します。
診断と注意点
- 診断は臨床症状と抗原検査で行います。
- 流行性角結膜炎と同様、非常に感染力が強いため、集団生活では早めの対応が求められます。
- プールの水を介した感染のほか、タオルや手指を介しても感染します。
治療と処方
- こちらもウイルス感染のため対症療法が中心です。
- 解熱剤(アセトアミノフェンなど)や、のどの炎症を抑える内服薬、目の症状に対しては点眼薬が処方されます。
その後の診療計画
- 通常は3~5日間の発熱後に自然軽快します。
- 解熱後2日が経過すれば登園・登校が可能となります(学校保健安全法による基準)。
3.家庭での注意と予防法
どちらの感染症も、飛沫感染と接触感染で広がります。ご家族が感染した場合、以下の点に注意しましょう。
- タオルや洗面器を家族と共用しない
- 感染者の目に触れた手で、他人の物を触らないように注意
- 手洗いをこまめに行い、アルコールではなく石けんで洗う(アデノウイルスはアルコールに強いため)
- 子どもが症状を訴えた場合は、早めに眼科や小児科を受診する
4.まとめ
流行性角結膜炎や咽頭結膜熱は、目に症状が出る感染症として非常に多く見られるものです。どちらもアデノウイルスが原因で、特効薬はありませんが、アデノウイルスの抗原検査で診断できます。正しい診断と適切なケアで自然に回復する病気です。
感染を広げないよう早期の受診と、家庭や学校での感染対策がとても大切です。これからの季節、目の充血やめやに、発熱などが見られたら、早めに眼科での診察をお勧めします。
コメント