昨年末に製薬会社の担当者Sさんに(アレルギー性結膜炎を含む)花粉症治療薬の話を伺ってから、私はこの記事の内容を新聞記事に取り上げていただくことを提案してきました。そして東京での花粉飛散開始を約一か月後に控えて、いよいよ通常よりも長めで、この記事が上梓されました。その間には、今年の杉花粉の飛散は10年来で最大の飛散量になるという予測が気象庁から発表されたそうです。この記事は間もなくヤフーニュース・グーグルニュースなどなどにも日刊ゲンダイからの配信で転載される予定です。そちらでは、折り返しなしでの掲載がなされるので読みやすいことが期待されます。
ーーーー自著記事再録ーーーーーー
① 花粉症の人がいまできる対策は? 過去10年で最大の大量飛散の見通し
環境省は昨年12月26日に「令和4年度スギ雄花花芽調査の結果」を発表した。それによるとスギ花粉が関東などで過去10年で最大の大量飛散の見通しという。新型コロナとインフルエンザのダブル感染の懸念が高まるなか、花粉症も加わるとなると仕事や学業への集中力が妨げられるなど影響は避けられない。いまできる対策はあるのか。「自由が丘清澤眼科」(東京・目黒区)の清澤源弘院長に聞いた。
「花粉症の初期療法は花粉飛散予想日(東京では2月14日前後)の2~3週間前か、症状が少しでも出始めた時点で抗アレルギー点眼薬をスタートさせることで、花粉飛散ピーク時の症状を軽減するやり方です。花粉症の人は目がかゆくなりますが、最近はそれを強力に抑えるアレルギー性結膜炎の点眼薬が発売されています。花粉シーズンになると受診者が急増することから早めに受診するとよいでしょう」
そもそも花粉症の人が目にかゆみや痛みが出てくるのは、花粉によりアレルギー性結膜炎を発症するからだ。抗原となる花粉が目や鼻などから体内に侵入すると、リンパ球が花粉を異物として認識して抗体(IgE抗体)を作り、肥満細胞とくっつく。その後、花粉が体内に侵入し、IgE抗体と結合すると肥満細胞からヒスタミンなどのアレルギー物質が放出される。その物質が神経や血管の受容体に結合して花粉をできるだけ排除しようとして、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりなどとともに目のかゆみや充血を起こす。
② 「多くの人は花粉症の点眼薬は自覚症状が出てから使うと考えがちです。それは従来の花粉症の点眼薬が花粉症の自覚症状が出る最終局面である、花粉とIgE抗体の結合をブロックすることで、花粉症の症状を緩和する設計だったからです。ところが、最近の抗アレルギー点眼薬は花粉症の症状が起こるまでの一連の流れの複数のポイントを阻害するよう設計されています。そのため自覚症状が出る前から使用することが大切なのです」
最近は1日当たりの点眼回数が半分で済む抗アレルギー点眼薬が発売され、より利用しやすくなったという。
実際、処方薬「アレジオン点眼液0.05%」(参天製薬)の1日の点眼回数は4回(朝・昼・晩・寝る前)だったが、「アレジオンLX点眼液0.1%」(同)は薬効成分濃度を2倍にしたことで1日2回となった。
■花粉の暴露量を減らす
③ むろん、いまできる花粉症対策は点眼薬だけではない。とくに気をつけたいのはコンタクトレンズを使っている人だ。
「ハードコンタクトレンズは、角膜が傷つくととても痛くて使用できませんが、ソフトコンタクトだと包帯効果といって、ソフトコンタクトレンズが包帯のように傷を保護して痛みを抑えてくれる場合があります。しかし、ソフトコンタクトレンズは角膜の傷を治してくれるわけではなく、気づきが遅れて傷が悪化する場合があります」
なかには花粉症シーズン中にコンタクトがはずれやすい人がいるが、その場合は「巨大乳頭性結膜炎」を発症している可能性がある。ひどくなると、治療に1年以上かかる場合があるというから早めの受診が必要だ。
「ソフトコンタクトレンズを使っている人にとって大事なことは、花粉への暴露を減らし、正しいレンズケアをすることです。そのためにゴーグルやメガネを併用したり、コンタクトレンズをメガネに変更するのも手です。ソフトコンタクトレンズを使い続けたい人は花粉シーズンに備えて1日使い捨てタイプを用意しておくとよいでしょう。コンタクトレンズに付着した花粉は念入りにケアをしても、一般の人が全て落とすことは不可能と思われるからです」
④ メガネを利用している人や視力に問題ない人も花粉症である場合は花粉の暴露量を減らすことが課題になる。それには、花粉症の時季だけゴーグルタイプのメガネを利用するのもいいかもしれない。
この時季、メガネ店では花粉症対策用メガネを販売している。気になる人はメガネ店をのぞいてみるといいだろう。
「花粉の暴露量を減らすために外出時にはメガネ以外にもマスク、帽子、マフラーの着用を心がけましょう。花粉を家の中に入れないように、表面に繊維の立っていない衣類を用い、家に入る前に衣服表面をよく払うことが大切です。刺激を減らす意味でたばこ、お酒は控えるのも手です。もちろんバランスのとれた食生活でアレルギーが出ない健康体でいることにも気をつけたいものです」
例年、花粉症で目のかゆみなどで悩む人は早めに準備することだ。
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