緑内障点眼後、目頭を押さえる必要性が高い点眼薬とは?
緑内障治療で処方される点眼薬の多くは、眼圧を下げることを目的としています。点眼の際に「目頭を押さえるように」と説明を受けた方もいるかもしれません。これは、点眼薬が鼻涙管から鼻腔に流れて全身に吸収されるのを防ぐための処置です。
どの点眼薬で目頭を押さえる必要が特に高いのか?
特にβ遮断薬(βブロッカー)を含む点眼薬(例:チモロール、カルテオロールなど)では、この「目頭を押さえる処置」が重要です。
βブロッカー点眼薬の全身への影響
β遮断薬は、交感神経のβ受容体をブロックして眼房水の産生を抑え、眼圧を下げます。しかし、この成分が鼻涙管から鼻粘膜に吸収されて全身に回ると、心臓や呼吸器に影響を及ぼすことがあります。
代表的な副作用:
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徐脈(脈が遅くなる)
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低血圧
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気管支喘息の悪化(気管支収縮)
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疲労感やうつ症状の悪化
これらの全身副作用を最小限に抑えるために、点眼後に1〜2分間、目頭を軽く押さえる「涙道圧迫(nasolacrimal occlusion)」が有効です。
プロスタグランジン関連薬や炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)の場合は?
プロスタグランジン関連薬(例:ラタノプロスト、トラボプロスト)や、CAI(炭酸脱水素阻害薬 例:ドルゾラミド、ブリンゾラミド)は、点眼後に全身への影響はβブロッカーほど顕著ではありません。
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プロスタグランジン系は主に局所で作用し、全身吸収された場合の副作用は少ないとされます(まれに関節痛や皮膚反応など)。
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CAIも点眼薬としての全身副作用は比較的少なく、安全性が高いと考えられています。
したがって、これらの薬剤では涙道圧迫は「できれば望ましい」程度であり、βブロッカーほど強く推奨されるわけではありません。
まとめ
点眼薬の種類 | 目頭を押さえる必要性 | 理由 |
---|---|---|
β遮断薬(チモロールなど) | 高い | 心肺機能などへの全身副作用のリスクがある |
プロスタグランジン系 | 中程度(望ましい) | 全身作用は少ないが、局所反応や副作用予防のため |
CAI(炭酸脱水酵素阻害薬) | 中程度(望ましい) | 全身副作用は少ないが、吸収を減らす意味で有用 |
院長からひと言
日々の点眼が、全身にも影響する可能性があることは意外に思われるかもしれません。特に心疾患(徐脈、低血圧)や呼吸器疾患(喘息)をお持ちの方には、点眼の仕方ひとつで安全性が大きく変わることがあります。医師の指示に従い、点眼後に目頭を軽く1〜2分押さえることをぜひ習慣にしてみてください。
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