神経眼科学会が11月29日から30日にかけて金沢で開催されます。抄録集が届きました。プログラムから注目の演題をいくつかご紹介します。
- 副鼻腔のOnodi蜂巣は、真菌性鼻性視神経症の原因となることが多いにもかかわらず見落とされやすい病変部位として、注意が必要とされています。アスペルギルス抗体陽性でポリコナゾル点滴で治療された。(曽根奈津季・東邦大学)。
- 思春期以降の後天共同性内斜視(acquired comitant esotropia ACE)は、近年その増加が注目される疾患です。40歳未満が77%で、91%が複視を訴えた。近視の人の未矯正での近業が一つの契機である可能性が述べられている。(宇井牧子・CS眼科クリニック、東京大学)
- 上斜筋ミオキミアの治療として、片側顔面痙攣や三叉神経痛の治療に用いられている脳神経血管減圧術を取り入れた発表も複数ありました(光井江里佳・国際医療福祉大学熱海病院ほか)。通常はベータブロッカー点眼で対応される上斜筋ミオキミアの最初の報告は1970年ホイトらが5例だったそうです。
- 眼窩先端部症候群の多数例検討(八坂裕太・九州大学)も興味深い演題です。資力低下47%、複視28%、眼瞼下垂19%。腫瘍性50%、炎症性28%、海綿静脈洞瘻6%、感染6%、原因不明9%であったという。
**羞明(まぶしさ)**についてもいくつかの発表が行われます。鈴木幸久、清澤源弘ほかによる「羞明の有無による眼瞼痙攣患者の糖代謝分布の違い」の研究や、若倉雅登(井上眼科)による「光過敏、片頭痛、早朝に症状が顕著な眼瞼痙攣患者へのHDグラスの治療」が取り上げられています。また、羞明に関するシンポジウムも開催され、その発症機序と治療法の検討が深く議論される予定です。
- 神経眼科的な症状を初発とした悪性リンパ腫(森真喜子・宮崎大学)の神経眼科的兆候は眼瞼下垂(ホルネル症候群)、視神経障害、外眼筋浸潤など多様性に富むとの発表もあります。
- 片頭痛患者の網膜厚を光干渉断層計(OCT)で測定した検討(秋山久尚・聖マリアンナ医科大学)では、既報同様に視覚症状の有る片頭痛では12区画領域でのRNFL厚に有意差が得られたという。閃輝暗点を起こす脳虚血は後頭葉に有るはずだが、その点網膜の菲薄化はどう説明するのだろうか?
- 視神経乳頭腫脹におけるPHOMS(Peripapillary Hyperreflective Ovoid Mass-like Structures)の検討(伊藤宗桂・京都大学)も興味深い内容です。44例56眼を調べて、PHOMSはブルッフ膜の距離が長かった例に見られたという。
- 視神経乳頭腫脹の鑑別については、第10回日本神経眼科学会認定講習会で東京慈恵会医科大学の敷島敬悟氏が講演予定です。
**視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)**は今、注目されているテーマで、関西医科大学の藤井ちひろ氏による「病態と治療」、宮崎大学の中馬秀樹氏による「最新の治療法とベストプラクティス」、東京医科大学の中田梨沙氏による「AQP4抗体陽性視神経炎に対するイネビリズマブの報告」など、関連した発表3件も行われます。
また、レーベル遺伝性視神経症に対する新たな治療法の模索も続いており、神戸大学の高野史生氏による頻回経皮膚電気刺激の臨床試験の発表が注目されます。
非動脈炎性前部虚血性視神経症における網膜動脈血管径と血管壁厚の変化(但馬悠介・京都大学)の研究でも、同側だけでなく体側にも有意の血管壁肥厚の結果が得られたという。さらに、臨床神経眼科におけるMRI検査の有効な活用方法について中村記念病院の橋本雅人氏が講演予定で、こちらも興味深いです。
甲状腺関連の視神経症や眼症も注目されており、兵庫医科大学の尾下奈穂美氏ほかによる4題の発表が予定されています。
- うっ血乳頭を契機にJAK2遺伝子変異が検出され、原発性骨髄線維症と診断された1例についても発表があります(金沢大学の和田崇宏氏と大久保学会長が共同で報告)。
最後に、眼球運動オンデマンドセミナーとして、柏井聡氏(愛知淑徳大学)による「眼球運動の見方 – 基本編および上級編」が、2024年11月中旬から2025年1月15日までオンデマンド配信されます。また、「眼球運動の神経生理学 – サッケードと固視の神経回路」に関して、東北大学大学院の高橋真有氏による発表も予定されています。後日視聴予定です。(11月18日加筆)
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