最近、紫と茶の色の判別が各眼で難しくなったという訴えの患者が居ます。両眼(左右別々に存在する)ですが、中枢性の病異変でこのような色覚障害を想定できるケースはありますか?
:「紫と茶の識別が困難になった」という訴えは、中枢性の視覚情報処理異常によって生じる可能性があります。以下のような中枢性病変(大脳レベル)や視覚伝導路の病変が関与している場合が考えられます。
【1】視覚情報の中枢処理異常:大脳皮質の後頭葉・側頭葉病変
- 大脳皮質視覚野(V4領域)の障害では、色覚異常(中枢性色覚障害、色覚失認=achromatopsia)が生じます。
- 特にV4(主に両側後頭葉と一部側頭葉の間)は色の知覚処理に関与。
- 両側V4の障害では完全色覚消失(cerebral achromatopsia)が起こることも。
- 片側V4障害では、視野の一側に限局した半側性色覚障害が起こることもあります。
▶ 想定される疾患
- 後頭葉梗塞や出血(特に両側)
- 後部皮質萎縮(PCA:posterior cortical atrophy)
- 神経変性疾患(アルツハイマー型認知症の視覚型など)
- 頭部外傷や脳腫瘍
【2】視放線や視索の病変(両眼性で左右同時進行する場合)
視交叉後の視索や視放線の障害が左右で起こると、色知覚の微妙な低下や色の混同(とくに境界色:紫・茶・灰など)が出ることがあります。
- 色覚障害だけでなく、視野異常(両耳側半盲や不完全な同名半盲)を伴っていないか要確認。
【3】眼球側に異常がなく、急速に変化した色覚の異常を両眼で訴える場合のポイント
- 心因性障害の可能性も否定できませんが、
- 中枢性障害が疑われる場合には以下の精査が有用です。
【推奨される検査・評価】
検査項目 |
内容 |
視野検査 |
両眼に同名半盲がないか(後頭葉病変を示唆) |
MRI(特にFLAIR・拡散強調) |
後頭葉〜側頭葉の病変を確認 |
色覚検査(PAMテスト、アノマロスコープ) |
定量的評価。中心暗点や網膜疾患との鑑別にも有用 |
神経学的評価 |
同時失認、相貌失認、文字失読などの合併の確認(視覚性認知障害) |
【まとめ】
- 紫と茶の識別障害が両眼性に生じた場合、中枢性色覚障害(特にV4障害)の可能性があります。
- 視覚連合野の障害(例:後部皮質萎縮)などでは、色覚のみならず空間認知や視覚記憶の障害も出現することがあります。
- 精査には脳MRIと視野検査、色覚の定量検査が必要です。
- 疾患の診断名側からの説明も記載しておきます。
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