神経眼科

[No.1828] ビジュアルスノウに手術適応は有るのか?

◎ ビジュアルスノウ症候群についてはその特徴などは記載され始めましたが、その原因や治療法については何もわかってはいないという状況です。(★1)

★1:① Visual snowビジュアルスノウについて:診断と治療 | 自由が丘 …. https://jiyugaoka-kiyosawa-eyeclinic.com/shiryokuteika/625/

② ビジュアルスノウ(視界砂嵐症候群, visual snow:診断、病態 …. https://jiyugaoka-kiyosawa-eyeclinic.com/shinkei/2575/.

 

◎最近、私はコロナ感染症の後で強い飛蚊症(spotted vision)ないしビジュアルスノウを発生したという患者さんを見ました。公式的な見解としては、ビジュアルスノウは、視界一面が細かな小雪もしくは砂嵐のようなもので覆われ、見たい対象物を見えにくくしてしまう現象です。一方、飛蚊症は、目の前に小さな虫が飛んでいるように見える現象です。両者は異なる症状であり、関係はありません。また、検索してみても、コロナ感染症とビジュアルスノウを結び付けた記録はありませんでした。また、飛蚊症とコロナ感染後遺症を結び付ける報告もありませんでした。

  • 新型コロナウイルス感染症の神経精神的な後遺症には、疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下などがあります. また、コロナの後遺症は倦怠感やブレインフォグだけでなく、味覚・嗅覚障害や動悸など外からはわかりにくい症状が多いのも特徴です(★2).

★2:① 新型コロナウイルス感染症による後遺症を診療 | 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター National Center of Neurology and Psychiatry (ncnp.go.jp)

② 新型コロナ、回復患者の3分の1が精神・神経疾患を発症=論文 …. https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-brain-idJPKBN2BU02R.

 

  • 最近、私が気にしているのは、いわゆる発達障害とビジュアルスノウの症状に似た点があることです。また私がビジュアルスノウ症候群と診断した患者さんで既に発達障害の診断を受けていた患者さんもいました。発達障害には、知的能力障害(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症 (ADHD)、限局性学習症(学習障害)、協調運動症、チック症、吃音などが含まれます. 同じ障害名でも特性の現れ方が違ったり、他の発達障害や精神疾患を併せ持つこともあります。また、自閉症患者の物の見え方の特徴を調べてみると、ビジュアルスノウに似た絵が示されています。東京大学のこころの発達診療部によると、自閉症の人は感覚が敏感になる「感覚過敏」や、逆に感覚が鈍くなってしまう「感覚鈍麻」という特徴があります。その特徴から「様々な音や声がうるさく聞こえる」「光をまぶしく感じる」「色が不鮮明やモノクロに見える」などの症状が現れることがあるといいます。(★3)

★3 ①自閉症や発達障害の人の世界の見え方や感じ方 | 発達障害 …. https://hattatu-jihei.net/world-that-autism-sees.

 

◎ 現在のところ、ビジュアルスノウ症候群に対しては確立された治療法は有りません。患者さんがその症状から一刻も早く何とか逃れたいと思う気持ちは理解いたします。しかし、網膜剥離はもちろん、硝子体混濁や後部硝子体剥離もない目に対して硝子体切除手術を行うといった過剰に積極的な治療を考えるのには賛成いたしかねます。なぜならば、硝子体手術は多くの場合、水晶体切除を併用しなくても術後早期に水晶体混濁(白内障)を起こすことが予測され、人口水晶体にすることで調節力は失われます。手術自体も全く合併症の無い手術ではないです。私は恩師の水野勝義教授が、述べた警告を思い出します。昭和30年代の人工水晶体手術が一般的でなかった頃に、過剰に積極的にその手術を行う人々を当時の水野勝義 東北大教授(故人)が「むやみに眼内レンズを入れる眼科医は海賊と同じだ」と広言したことで、この言葉が広まりました。(★4)

★4:① 教室沿革|東北大学医学部 眼科学教室. http://www.oph.med.tohoku.ac.jp/classroom/outline.

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