神経眼科

[No.3566] 中枢性色覚障害(central acquired dyschromatopsia)の概論です

中枢正色覚障害は、網膜や視神経には異常がないにもかかわらず、視覚の中枢(視放線、視放線後の大脳皮質)に原因がある色覚異常を指します。以下にその概要を専門的かつ患者さんにも理解しやすい形でまとめてみます。


◆ 中枢性色覚障害とは?

色を見分ける能力は、網膜の錐体細胞→視神経→視交叉→視索→外側膝状体→視放線→後頭葉一次視覚野・視覚連合野という経路で処理されます。中枢性色覚障害は、この経路の後半、特に大脳の後頭葉から側頭葉、頭頂葉にかけての損傷によって起こるものです。


◆ 主な原因疾患

  • 後頭葉梗塞(特に両側紡錘状回の損傷):重度では色盲様となる

  • 視放線や視覚連合野の損傷:交通事故や脳出血など

  • 多発性硬化症(MS)

  • 後天性視覚失認(achromatopsia)

  • 偏頭痛に伴う一過性の視覚症状


◆ 主な症状

  • 色の名前が思い出せない

  • 紫と茶、赤と緑など特定の色の区別が困難

  • 左右で見え方が違う(片側性あり)

  • 視力は正常で、眼底も異常なし

  • 「色がくすんで見える」「一部がモノクロに見える」

  • 片側の障害で、視野の一部だけ色が見えにくい場合も


◆ 検査方法

  • 色覚検査(石原表、アノマロスコープ、HRR)

    • 中枢性色覚障害では、典型的な先天色覚異常と異なるパターンを示す

  • 視野検査:視野の異常が伴うことが多い

  • 脳MRI:後頭葉〜視覚連合野にかけての病変を評価

  • VEP(視覚誘発電位):視神経経路の機能的評価


◆ 鑑別すべき他の色覚異常

種類 原因 主な特徴
先天性色覚異常 網膜の錐体細胞の遺伝的異常 両眼性、左右対称、進行しない
視神経疾患による色覚異常 視神経炎、視神経症など 視力低下を伴いやすい、片眼性もあり
中枢性色覚障害 脳の視覚中枢の障害 両眼性でも左右差あり、視力正常なことも

◆ 治療と経過

  • 原因疾患の治療が優先されます(例:脳梗塞の急性期治療、MSのステロイド治療など)。

  • 色覚自体の回復は不完全なことも多いが、可逆的な場合もあります。

  • 視覚リハビリ生活指導が必要になることもあります。


個別の症例を考えるという側からのアプローチならば;

後天性中枢性色覚障害?;症例側からの説明

◆ 症例に関するコメント(ご質問の背景)

「両眼で紫と茶の判別が難しくなった」という主訴は、網膜や視神経に器質的な障害がない場合、中枢性色覚障害の可能性が考えられます。紫系(青+赤)と茶系(赤+緑+黒)の区別は、特に視覚連合野の損傷や、色名の記憶と関係する側頭葉障害と関連することがあります。

メルマガ登録
 

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。