神経眼科

[No.3921] パニック障害と眼の症状について

パニック障害と眼の症状について

パニック障害は、不安や緊張が急に高まり、動悸や息苦しさ、めまいなどの身体症状を伴う発作を繰り返す病気です。発作は突然起こり、命に関わるものではありませんが、本人にとっては強い恐怖を感じるため日常生活に大きな影響を与えます。このような精神的な不安は体のさまざまな部位に症状として現れますが、その一つに「目」があります。

パニック障害で見られる眼の症状

パニック発作や不安が強いとき、次のような眼の症状を訴える方が少なくありません。

  1. かすみ目(視界がぼやける)

    強い緊張や過呼吸により体内の二酸化炭素のバランスが崩れると、目のピントを調節する筋肉に影響が出て、一時的に視界がぼやけることがあります。また、自律神経の乱れによって瞳孔が開きすぎたり閉じにくくなったりしても、かすみ目が起こります。

  2. 羞明(光がまぶしく感じる)

    不安で自律神経が過敏になると、普通の明るさでも光が強すぎるように感じることがあります。特に発作中は交感神経が優位になり、瞳孔が大きく開くために光が目に入りやすくなり、まぶしさが増します。

  3. 瞼の痙攣(まぶたがピクピクする)

    精神的なストレスや疲労で顔面の神経が過敏になると、まぶたの筋肉が不随意にけいれんすることがあります。パニック障害の方では緊張状態が続くことでこの症状が目立つ場合があります。

  4. 眼精疲労

    不安による緊張で体がこわばると、目の周囲の筋肉も硬くなります。その結果、長時間の読書やスマートフォン使用で目が異常に疲れやすくなることがあります。また、睡眠の質が下がることも疲れ目の原因になります。

症状が起こる仕組み

これらの眼の症状の背景には「自律神経の乱れ」が関わっています。自律神経は、心臓や呼吸だけでなく、瞳孔の大きさやピント調節など目の働きもコントロールしています。パニック障害では不安や恐怖が脳に強く作用するため、この自律神経が過敏に働き、眼の症状が出やすくなるのです。

鑑別すべき点

大切なのは、これらの症状が必ずしもパニック障害だけで起こるわけではないという点です。たとえば、かすみ目は白内障や緑内障でもみられますし、羞明は角膜の異常やドライアイが原因のこともあります。したがって、症状が続く場合は必ず眼科での診察を受け、目の病気との区別を行うことが必要です。

治療と対処

パニック障害の治療は心療内科や精神科で行われますが、眼の症状が辛いときには次のような工夫が役立ちます。

  • かすみ目や眼精疲労には、意識的に深呼吸をして体の緊張をほぐすことが大切です。

  • 光がまぶしいときには、サングラスやブルーライトカット眼鏡を利用するのも有効です。

  • まぶたの痙攣は多くの場合一時的ですが、睡眠不足やストレスを減らすことで改善しやすくなります。

  • 目の症状が気になるときは眼科で検査を受け、安心材料を得ること自体が不安軽減につながります。

まとめ

パニック障害は心の病気ですが、その影響は目にも表れます。かすみ目、羞明、瞼の痙攣、眼精疲労といった症状は、自律神経の不調や緊張の高まりによって起こるものです。これらの症状は目そのものの病気と区別が難しいため、不安を感じたら眼科と心療内科の両方で相談すると安心です。「目の症状はパニック障害の一部として現れることがある」と知っておくことは、恐怖心を和らげ、適切な対応を取るうえで大きな助けになります。

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