むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)は、主に夕方から夜にかけて、脚(ときに腕など)を動かしたくてたまらなくなる神経の病気です。じっと座っていたり横になって休もうとすると、脚にむずむずする、チクチクする、虫が這うような感じ、時には痛みや違和感が出て、思わず動かしたくなります。動かすと一時的に楽になるのが特徴で、このため寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚めるなど、睡眠の質が下がって生活の質に影響します。
頻度は珍しくありません。米国では成人の約8%が1年のうちに症状を経験し、週に何度も中等度以上の症状に悩む人が約3%とされています。高齢になるほど増え、女性に多い傾向があります。鉄欠乏性貧血、末期腎臓病、末梢神経障害、パーキンソン病、妊娠(特に後期)や多発性硬化症などに合併しやすいことも知られています。
ここで「目との関係」ですが、むずむず脚症候群は基本的に“目の病気”ではなく、典型例で「眼症状が前面に出る」ことは多くありません。一方で、近年「脚ではなく別の部位に同じ性質の不快感が出る」変異型(restless X syndrome)の報告が増えており、眼の周囲に夜間の強い不快感や痛みが出て、眼球運動やまぶたへの刺激で楽になるという、いわば「むずむず目(restless eyes)」の症例報告も出ています。乾き目や顔面痛として治療されていたが改善せず、最終的にRLSの眼の変異型として考え直された、という内容です。頻度は不明で、現時点では“まれ”と考えるのが妥当ですが、夜に限って出る眼の違和感が「動かすと軽くなる」というとき、鑑別のヒントになります。
また、研究レベルでは、RLS患者でOCTの網膜(網膜神経線維層や黄斑部など)の厚みが対照群より薄い可能性を示した報告があります。ただし、これは「診断に使える」「目の病気が必ず起こる」という意味ではなく、病態(ドーパミン系など)を考える上での示唆に留まります。現段階では、眼科的な検査がRLSの標準診断になるわけではありません。 さらに多発性硬化症の患者さんでは、RLSを合併している群で網膜の一部がより薄い傾向が報告されており、神経疾患と睡眠・感覚症状のつながりを考える材料として注目されています。
診断は基本的に症状から行い、睡眠検査は通常すすめられません。悪化させる薬(例:一部の抗ヒスタミン薬、セロトニン系抗うつ薬、ドーパミン遮断薬など)があれば、可能なら見直します。そして重要なのが鉄不足の確認で、血液検査で鉄欠乏があれば経口鉄や静注鉄で補うことが勧められます。
治療は、症状が頻繁で困る場合、現在はガバペンチンやプレガバリンなど(ガバペンチノイド系)が第一選択で、多くの患者さんで改善が期待できます。効果不十分なら別薬への切替や、場合により低用量オピオイド、あるいはドーパミン作動薬が検討されますが、ドーパミン作動薬は“かえって症状が前倒しに悪化する(augmentation)”ことがあり、慎重な経過観察が必要です。
薬でも十分でない場合、下腿に装着して腓骨神経を刺激する装置が有効なことがある、とされています。
むずむず脚症候群は、きちんと見立てれば対策がある病気です。もし「夜になると脚(あるいは、まれに眼の周囲)が落ち着かず、動かすと少し楽になる」「それで眠れない」が続くときは、我慢せず相談してよい症状です。
出典:Kristin Walter, MD, MS. “What Is Restless Legs Syndrome?” JAMA. Published online Jan 21, 2026. doi:10.1001/jama.2025.26155.



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