NIPT(非侵襲的出生前遺伝学的検査)とPGT‑M(単一遺伝子疾患に対する着床前遺伝子検査)とは?:
清澤のコメント:日本医師会雑誌2025年6号は、「生殖医学におけるゲノム医療と倫理」を特集に選んでいます。頭書の2つの単語がキーワードの様でしたのでそれが何を意味するのか?また眼科医としてどう関与できるのか?をポイントとして調査してみました。具体的には、網膜変性疾患などについてならば、比較的近くにある東京医療センターなどにも紹介状を作成して相談が出来そうです。
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NIPT(非侵襲的出生前遺伝学的検査)とは?
NIPT(Non‑Invasive Prenatal Testing:非侵襲的出生前遺伝学的検査)とは、妊婦さんの採血だけで、胎児の染色体異常(主に21トリソミー=ダウン症、18トリミー、13トリミーなど)の可能性をスクリーニングする検査です。羊水検査のようにお腹に針を刺す必要がなく、妊娠10週以降から受けられ、結果は通常1〜10日で出ますniptjapan.com+1kamitokoro-w-clinic.com+1。
メリット
- 安全性が高い:母体・胎児への直接的リスクはほぼありません。
- 早期にわかる:出産前に適切な情報が得られ、家族の意思決定を支援しますniptjapan.com+1jstage.jst.go.jp+1。
- 精度が高い:スクリーニング精度は非常に良いですが、確定診断ではなく「可能性の推定」にすぎません。
注意点
- 陽性と出ても確定ではなく、羊水検査などの確定診断が必要です。
- 非侵襲的とはいえ、「検査をする/しない」を判断する際には、遺伝カウンセリングが不可欠です。妊婦さんだけでなくパートナーにも情報を共有し理解を得る必要がありますfujita-hu.ac.jp+2niptjapan.com+2mainichi.jp+2pd-navi.co.jp+2kamitokoro-w-clinic.com+2niptjapan.com+2。
- 日本では2025年4月時点で、NIPT認証施設制度が整備され、認証医療機関での十分な情報提供と倫理的配慮の下で実施されることが求められていますkamitokoro-w-clinic.com+1jams-prenatal.jp+1。
- 今後、全染色体を対象にしたNIPTの臨床研究も進行中で、検査の対象範囲や解釈の幅が拡大する可能性がありますprtimes.jp+8mainichi.jp+8jams-prenatal.jp+8。
PGT‑M(単一遺伝子疾患に対する着床前遺伝子検査)とは?
PGT‑M(Preimplantation Genetic Testing for Monogenic/single‑gene defects)は、不妊治療(体外受精・顕微授精)で得られた胚の一部を生検し、特定の遺伝性疾患(モノジェニック疾患)にかかるかどうかを事前に調べる検査ですuhcprovider.com+5lab.toho-u.ac.jp+5fertility.coopersurgical.com+5。
主な対象疾患
- 家族に重篤な遺伝性疾患(例:筋ジストロフィー、嚢胞性線維症、遺伝性視神経症など)の既往があり、自身が保因者である場合。
- 日本産科婦人科学会は「成人前に日常生活が著しく損なわれる、または生命に関わる疾患」を重篤疾患の対象としていますjsog.or.jpfujita-hu.ac.jp+1lab.toho-u.ac.jp+1。
メリット
- 高精度な選別:出生前に健康な胚を選んで移植できる。
- 再発リスク軽減:特定の遺伝性疾患の児を生むリスクを大きく下げられる。
倫理・社会的な課題
- 「命の選別」との批判もあり、倫理的議論は根強いです。検査が進むほど、「どんな基準で生まれる命を選ぶのか」の線引きが難しくなります。
- 国内では「個別審査・認可」体制で、厳格な遺伝カウンセリングと申請審査が義務付けられていますndlsearch.ndl.go.jp+3fujita-hu.ac.jp+3jsog.or.jp+3。
- PGT‑Mは体外受精を前提とするため、経済的負担や身体的負担が大きいことも考慮しなければなりません。
NIPTとPGT‑Mの比較まとめ
比較項目 |
NIPT |
PGT‑M |
方法 |
母体採血 |
胚の生検 + 体外受精 |
対象 |
染色体異数性(例:21トリソミー) |
モノジェニック疾患(例:筋ジストロフィー) |
リスク |
ほぼなし(採血のみ) |
胚に対する生物学的・倫理的負担、体外受精の負担 |
倫理的課題 |
情報提供と検査同意の重要性 |
命の選別、審査体制、費用・倫理のバランス |
日本での制度 |
認証施設での実施が必須www1.med.or.jp+7jsog.or.jp+7fertility.coopersurgical.com+7ccrmivf.com+4niptjapan.com+4lab.toho-u.ac.jp+4jstage.jst.go.jp |
個別審査・遺伝カウンセリング必須 |
眼科医として・院長ブログ読者の関心視点
眼科医にとって、遺伝性眼疾患(例:網膜色素変性、先天性色覚異常、視神経異形成など)は重要な関心事です。NIPTでは対象とならないものの、PGT‑Mの対象となる家族性感染や遺伝性視機能異常もありえます。
可能性と慎み
- PGT‑Mで選別対象となる眼疾患:網膜ジストロフィー、家族性緑内障など。
- 倫理配慮がより高度に必要:疾患の重症度や生活影響をどう評価するのか慎重な判断が必要です。
- 眼科医としての役割:家族歴の聴取、疾患の重症度評価、遺伝カウンセリングチームとの連携が期待されます。
今後の展望と読み物としての注目点
- 制度整備の進展:2025年以降、NIPTの全染色体対象化やPGT‑Mの審査基準緩和の動きもあり、最新動向に注視が必要ですmainichi.jp。
- 倫理・社会的議論:命の選別や遺伝情報の取り扱い、平等なアクセス、遺伝情報保護など、社会的理解と議論が求められます。
- 眼科診療への波及:遺伝性眼疾患の早期発見や家族計画への介入など、新たな診療スタイルが必要です。
📚 参考文献
- 玉井浩『NIPTにおける情報提供の在り方』日本医師会雑誌154(3):253–256, 2025年6月ndlsearch.ndl.go.jp
- 東邦大学病院『PGT(着床前遺伝学的検査)について』kamitokoro-w-clinic.com+2lab.toho-u.ac.jp+2jstage.jst.go.jp+2
- 日本産科婦人科学会「着床前診断に関する見解」
- 厚生労働省・日本医学会出生前検査認証制度関連資料
- 毎日新聞『全染色体対象NIPT臨床研究へ』2025年3月10日e-kjgm.org+12mainichi.jp+12prtimes.jp+12
以上を基に、眼科クリニック院長ブログでは、医療者としての知識提供と市民に向けた理解促進・議論の場づくりの役割を担うことができます。
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