日本医師会雑誌154巻特別号(1)は「がん診療2025」です。その248-249ページに国立がんセンター中央病院鈴木茂伸先生が眼腫瘍について記載しています。その記載も参考に眼腫瘍を説明してみます。日本の大学病院で眼腫瘍治療を得意としているところには東京医科大学なども有ります。
眼腫瘍とは?~目にできる腫瘍の種類とその対処法~
「眼腫瘍(がんしゅよう)」とは、目やその周囲に発生する“できもの”のうち、腫瘍性の性質をもつものを指します。腫瘍には良性と悪性がありますが、いずれも早期発見と適切な治療が重要です。
眼腫瘍の種類:眼内と眼外に分けられます
眼腫瘍は大きく分けて「眼内腫瘍」と「眼外腫瘍(眼付属器腫瘍)」に分けられます。
- 眼内腫瘍には、網膜や脈絡膜にできる腫瘍が含まれ、乳幼児に発症する網膜芽細胞腫(レチノブラストーマ)や、成人で見られるぶどう膜メラノーマなどが代表例です。
- 眼外腫瘍は、まぶたや結膜、涙腺などにできる腫瘍を指します。皮膚腫瘍のひとつとして扱われることも多く、特にまぶた(眼瞼)の腫瘍は眼科でよく扱います。
日本における眼腫瘍の実態
日本では、年間に約3,000例の眼腫瘍が報告されています。高齢化とともに増加傾向にあり、特に眼瞼の皮膚腫瘍が多く見られます。なかでも頻度が高いのは以下の腫瘍です:
- 基底細胞癌(basal cell carcinoma):比較的進行が遅いが再発しやすい。
- 扁平上皮癌(squamous cell carcinoma):転移の可能性がある。
- マイボーム腺癌(meibomian gland carcinoma):まぶたの脂腺から発生し、診断が難しい場合も。
- 悪性リンパ腫:結膜や眼窩にできることが多く、特にMALTリンパ腫がよく見られます。
眼腫瘍のリスクファクター
紫外線曝露が多い生活(屋外活動の多い人)、高齢者、白人や色素の薄い皮膚の持ち主に多い傾向があります。基底細胞癌や扁平上皮癌の発生には、長年の日光曝露が関与します。まぶたに“治らないできもの”が長く存在する場合は、専門医の診察が勧められます。
どのように見つけ、診断するのか?
早期発見の鍵は以下の症候や所見です:
- まぶたにしこり、ただれ、出血、腫れがある
- 結膜に白っぽいまたは赤い隆起がある
- 視力低下や視野欠損などの異常がある
- 両目の形が非対称になった
診断は細隙灯顕微鏡検査を基本に行います。腫瘍の性質が疑われた場合は、腫瘍の部分または全体を切除して病理検査を行います。必要に応じてMRIやCTなどの画像検査を用いて、広がりや眼窩内の浸潤の有無を評価します。
診療と治療の進め方
治療では、視機能の維持と整容面の配慮を両立させることが大切です。
- 良性腫瘍は切除のみで完治しますが、
- 悪性腫瘍では断端にがん細胞が残らないよう注意し、断端陽性の場合は追加治療が必要となることも。
- 眼内リンパ腫やMALTリンパ腫などは、放射線治療や化学療法が選択される場合もあります。
小児に多い網膜芽細胞腫では、早期発見とチーム医療により、眼球温存が90%、5年生存率は95%以上と非常に高い治療成績が報告されています。
まとめ:目の“できもの”は専門医にご相談を
目に違和感のあるしこりや赤みが長引くとき、放置してよい腫瘍かどうかを見極めるのは専門的な知識が必要です。視力や命に関わる場合もあるため、自己判断せず眼科医に相談してください。早期発見・早期治療が視機能と生活の質を守る第一歩です。
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